全1261文字
PR

政府が2020年11月6日に発表した2020年度版の経済財政白書。焦点は日本がコロナ禍でデジタル技術をうまく活用できなった理由の考察だ。「日本のIT人材はIT産業に偏りすぎ」との指摘は特に注目すべきだ。

 白書では、米英独仏の4カ国と日本との比較で、日本はIT人材がIT産業に偏在している状況を示している。欧米4カ国はいずれもIT人材の過半数を非IT産業が雇用している。米国の64.5%を筆頭にドイツが61.4%で続き、英国とフランスも53%台に達する。一方で日本はIT人材の72.3%をIT産業が雇用しており、非IT産業で就業するIT人材は27.7%にすぎない。

図 欧米4カ国と日本における、IT人材の所属する産業の構成比
図 欧米4カ国と日本における、IT人材の所属する産業の構成比
非IT産業に所属のIT人材、日本はわずか3割弱(2020年度経済財政白書を基に日経コンピュータ作成)
[画像のクリックで拡大表示]

 米国や英国でユーザー側の産業が多くのIT人材を雇用できている理由は、高い雇用の流動性と以前から指摘されてきた。例えばユーザー企業が基幹システムの大規模構築・更新に合わせて、数年間と期限を区切って優秀なIT技術者を雇用しやすい環境がある。

 ただ、米英より雇用流動性が低いとされる独仏も、ユーザー企業がIT人材を多く雇用している。日本は先進主要国の中でユーザー側のIT人材が決定的に不足している。白書はこのIT人材の偏りによって、システムの発注側と受託側の間で情報や知識の差が大きくなり、その結果システムの調達や運用でITベンダーへの依存が過度になって、ユーザー側が適切な発注や判断ができない可能性を示唆する。

行政と教育の不足が顕著

 白書は、ユーザー側となる非IT産業の中でもIT人材が著しく不足している部門として、行政機関と教育機関を挙げる。

 白書では、日米それぞれでIT人材がどの産業に所属しているかという構成比を比較した。IT産業・非IT産業を含む国内のIT人材の総数に対し、行政機関など「公務」に属するIT人材は0.5%、学校機関や塾産業など「教育・学習支援」の人材は0.3%にとどまる。米国は公務が5.6%、教育・学習支援が5.1%だ。

 行政と教育という2つの公的部門でのIT人材不足は、行政手続きのオンライン化や教育のIT化で他国に立ち遅れた現状を反映している。経済協力開発機構(OECD)調査による行政のオンライン化の普及率をみると、日本は回答した30カ国中で最下位の7.3%だった。同じくOECD調査による教育現場のIT化の割合も66%で45カ国中32位と下位に甘んじている。

 行政機関と教育のIT人材不足は、白書をまとめた政府自らの問題でもある。ただし今回の白書に対策方法への言及はない。菅政権が進めるデジタル庁創設は打開策の1つだが、欧米と比較すれば不足分を補える規模ではない。国が行政機関のIT人材を充実させる具体策の策定・実行が必要だ。

 日本の非IT産業の中では、製造業がIT人材総数の8.8%と比較的多く、IT投資額も他産業を上回っている。非IT産業の中でも「製造業への人材偏在」が目立っている。米国は研究機関や法律事務所、会計事務所、コンサルティングなどが該当する「学術研究、専門・技術サービス」が15.6%のIT人材を雇用している。