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ノイズによる量子ビットの誤りを自動訂正する「誤り耐性量子コンピューター」の国産開発事業が2021年1月にも本格始動、2050年の実用化を目指す。政府は当初5年で100億円を投じるが、開発資金の継続性が課題となりそうだ。

 同事業は従来技術の延長線上にない破壊的イノベーションの創出を目指す、内閣府の「ムーンショット型研究開発制度」の一環として進める。2021年初頭にも予算を配分し、具体的な開発に着手する見込みだ。

 同事業で開発する量子デバイスは4方式。NECが超電導方式、東京大学が光量子方式、沖縄科学技術大学院大学がイオントラップ方式、日立製作所が半導体方式をそれぞれ開発する。開発費用はそれぞれ約20億円の見込み。

図 内閣府の制度による誤り耐性量子コンピューター開発のロードマップ
図 内閣府の制度による誤り耐性量子コンピューター開発のロードマップ
4方式の量子デバイスを並行開発、ネックは長期的な軍資金(内閣府の資料を基に日経コンピュータ作成)
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 超電導方式は米グーグルや米IBMが取り組み、すでに「NISQ(Noisy Intermediate-Scale Quantum Computer、ノイズがありスケールしない量子コンピューター)」と呼ばれる誤り訂正機能を持たない量子コンピューターとして開発が進んでいることから、比較的早い段階で開発できる可能性がある。

 併せて、量子信号変換や素子同士の接続といった通信・ネットワークやソフトウエアの開発も進める。富士通研究所も協力する見通しだ。

 ただ、今回の事業が量子コンピューターの「本命」として目標に据えるのは、あくまで誤り耐性量子コンピューターの開発だ。一般に、誤り耐性量子コンピューターの実現には100万量子ビットが必要とされる。同事業は量子ビット数の目標値を定めていないが、まずは中間目標として2030年までにNISQと量子誤り訂正を実証する。デバイスの実証ができ次第クラウド経由で外部へ提供し、ソフト開発などにも役立てる。

 量子デバイス4方式の同時開発を進めるのは、誤り耐性量子コンピューターを実現するための「本命」方式がまだ模索段階のためだ。

 当面はこの4方式の開発に取り組むが、「例えば超電導方式と半導体方式の中間というデバイスもあるかもしれない。現状の4方式は将来の方向性を見つけるための材料で、将来の方向性の水先案内人として理論研究を進める」とプログラムディレクターを務める大阪大学大学院基礎工学研究科の北川勝浩教授は説明する。

海外から見劣りする研究開発投資

 課題は研究開発資金の継続性だ。量子技術開発を巡っては、米国政府は2019年からの5年間で1400億円前後を投じる見込み。中国政府も約1200億円をかけて量子技術の研究拠点を建設するとしている。日本政府の投資は大きく見劣りする。

 同事業は目標を2050年とする。政府予算による支援は最長10年間としているものの、現状で決まっているのは最初の5年間の約100億円のみだ。その後について政府は、民間企業の投資などの活用を促している。とはいえ、「量子技術開発には相当な研究開発投資が必要だ。米国と異なり、日本では民間企業の研究開発予算だけで継続するのは難しいのではないか」と北川教授は懸念を示す。