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政府が巨大IT企業の規制に向けた基本原則を公表した。データの価値に着目して独占禁止法の拡張運用を検討するなど、技術革新を促しながらデータ独占に歯止めを掛ける姿勢を鮮明にした。

 基本原則は2018年12月18日、経済産業省と公正取引委員会、総務省の3組織が共同で作成した。2018年7月から開催してきた有識者会合「デジタル・プラットフォーマーを巡る取引環境整備に関する検討会」がまとめた中間論点整理の内容をほぼ踏襲。巨大IT企業のデータ独占に歯止めをかけるとともに、取引の実態を解明し、不公正な取引を摘発する方向性を打ち出した。

図 政府が示した基本原則の概要
図 政府が示した基本原則の概要
監視組織を設置、データ移転ルールにも踏み込む
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 想定する規制対象は、ネット上で情報流通や取引仲介の機能を提供する「デジタル・プラットフォーマー」と呼ばれる企業だ。基本原則で検討を進めるとした具体的な施策は4つある。

 第1は取引の公正性と透明性を確保する施策だ。まず公取が2019年の早い時期に、各種プラットフォームと参加企業との取引実態について大規模かつ包括的な調査を実施。結果を踏まえ、プラットフォームの運営や取引実態を継続的に調査・監視する専門組織を2019年半ばにも設ける方向で検討する。取引条件について開示を求めるなどのルールも検討する。

 第2の施策はデータの価値に注目した独占禁止法の運用だ。例えば、無料のネットサービスでも「経済的価値を持つデータを消費者がプラットフォームに提供している(ギブアンドテイクの)取引行為だ」(有識者会合の構成員を務めた大阪大学大学院高等司法研究科の千葉恵美子教授)と捉えて、独禁法が禁じる「優越的地位の乱用規制」の適用を検討する。データ活用方法について消費者への説明が十分でなく、事前説明を逸脱してデータを使うといった行為は消費者に対し優越的地位を乱用している、との解釈だ。

 第3の施策として、プラットフォームの役割を想定した新たな業法の整備も検討する。主にシェアリングエコノミーの分野を想定しており、交通や古物取引、金融など様々な産業で業法の見直しが始まる可能性がある。

 第4の施策は消費者に個人情報管理の主導権を取り戻すためのデータ移転ルールなどの整備である。消費者が自らの判断で個人情報を預ける事業者や場所を制御できるようにするルールや仕組みを整備する。プラットフォーム事業に新規参入しやすくして、技術革新や競争を促すのが狙いだ。

具体的な制度に落とし込めるか

 一方で、基本原則に基づく規制の策定には課題も多い。例えばデータ乱用を防ぐルールとして、消費者へのより詳細な事前説明を義務付ける案が出ている。だが、全ての説明を理解してサービスを選択できるほどには消費者側のリテラシーが高まっていないのが現状だろう。

 技術革新を止めずに、消費者の利益を守る規制を実現できるか。制度設計の巧拙が問われる。