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映像配信ではマルチキャスト通信が多用される。既存環境への影響を考慮しないとトラブルに発展する。ネットワーク構成を事前に把握して問題を回避しよう。

 通信速度の向上で拠点間をまたぐ映像配信システムが手軽に構築できるようになってきた。映像配信のような同時に情報を共有するシステムでは、マルチキャスト通信が使用されることが多い。複数箇所へリアルタイム配信するには「1対多」の同報通信が有用だからだ。

 ただしマルチキャスト通信はUDP(User Datagram Protocol)と呼ばれる再送制御の仕組みがないプロトコルを利用する。輻輳(ふくそう)時のパケットロスへの対処などが欠かせない。今回はマルチキャスト通信にまつわるトラブルを紹介する。

L3スイッチで経路が途絶える

 A社はデータセンターに業務系システムを置き、各拠点をWAN回線で結んでいる。データセンターや各拠点のネットワークは障害発生時の業務影響を極力小さくするため、経路の冗長化や機器の二重化をしていた。

 社内に映像配信システムを導入する計画だったA社はデータセンターに新しくサーバーを設置し、拠点にマルチキャスト通信による映像配信の仕組みを構築することにした。データセンターに複数の配信用サーバーとそれらを接続するL2スイッチを導入し、既設のL2スイッチとL3スイッチ経由で拠点のクライアントPCに映像を配信しようとした。

 早速、マルチキャスト通信の設定を既設ネットワークに追加して疎通テストを実施した。ところがデータセンターから送信したマルチキャストパケットが拠点で受信できなかった。

 原因を調査するため、「1対1」のユニキャスト通信でデータを配信したところ問題なく受信できた。結果、マルチキャストパケットだけが受信できない状態だと判明した。

 なぜマルチキャストパケットだけ受信できないのか。疑問を感じた担当者は経路情報を確認した。マルチキャストの通信経路はユニキャストを基に生成されるからだ。するとデータセンター内のL3スイッチで経路情報が途絶えることが分かった。

 しかしユニキャスト通信は正しく送受信できることを確かめたばかりだ。同じ経路をたどるマルチキャスト通信だけ経路情報が途絶える理由が分からず、調査は行き詰まってしまった。