フランス発の写真共有サービスBeRealの参加者が急速に増えている。自分や友人の日常生活におけるリアルな姿を1日1回共有し合い、楽しむ。ネット上のつながりと現実の社会が一体になった中で事業をする時代が来た。
2022年11月28日、米アップルは「ベストiPhone App」にフランス生まれの写真共有サービスBeRealを選んだ。BeRealアプリのダウンロード数は2022年10月に5000万件を超え、その後も増え続けている。
1日1回しか投稿できない
BeRealのサイトやApp Storeにある文章が明解なので引用する。
“BeReal is here to connect you to the people that matter to you.”
(大切な人とつながるための場所です)
“A new and unique way to discover who your friends really are in their daily life.”
(新しいユニークなやり方であなたの友人の日常生活におけるリアルな様子を見いだせます)
“Every day at a different time, everyone is notified simultaneously to capture and share a Photo in 2 Minutes.”
(異なる時刻に毎日1回、2分以内に写真を撮って共有するように全員へ連絡がいきます)
いつ連絡が来るか、事前には分からない。写真はインカメラとアウトカメラで同時撮影する。フィルターなどで加工はできない。自分や友人が今、見ている光景とその瞬間の姿がそのまま映し出される。投稿すると組み写真になって公開され、それを眺めると、たとえ遠くにいても、相手と同じ場所に今いるかのように感じられる。
友人を招待し、投稿を共有していく。自分が投稿しなければ友人の投稿は見られない。友人について見られるのは直近の1投稿だけだが自分の過去の投稿は見られる。友達の投稿に短文でコメントを付けたり、自分の顔写真を使ったスタンプを押したりできる。
BeRealの参加者はネット上でお互いの「日常生活におけるリアルな様子」を「共有」することで、安心してつながりを一緒に深めていく。
人気の理由を探ろうとネットニュースなどがBeReal体験記を掲載している。何かひらめいたときにすぐ投稿できないので使い始めはイライラした、いきなり連絡が来て慌てて撮影したが加工ができないため、当初はひどい写真を投稿せざるをえなかった、といった感想が散見される。それでも使い続けていると、友人と1日1回、今の様子を伝え合う、表情で相手に反応するという体験の気楽さと、頻繁にやり取りしなくても友人の様子が分かる、ほどよい距離感が心地よくなってくる。
こうしてBeRealで友人とつながること自体が日常生活になじんでいく。用事があるから連絡する、発言や議論をしたい、自分の存在を誇示する、といったソーシャルメディアへの投稿ややり取りとはまったく異なる。
BeRealはAppStoreの画面で「警告」と題し、「中毒性があります」「使うと感情的になるかもしれません」「TikTokやインスタグラムと違い、インフルエンサーになれるようなアプリではありません」などと特徴をユーモラスに列記している。興味深いのは警告の筆頭に「あなたの創造性をチャレンジします」と記していることだ。
制限があるサービスと場であるからこそ、なじんでくると友人について、時には自分自身について、新たな発見があり、創造性が刺激される。こうなると「中毒性」が出てくる。友人の投稿を習慣的に確認し、反応している実態は「Z世代のスクリーンタイム調査(米dcdxが2022年12月に発表)」でBeRealが23位に入ったことから分かる。BeRealは設計上、長時間の使用を意図していないにもかかわらず、利用者のスクリーンタイム(利用時間)は案外長い。