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新型コロナウイルス感染症という危機への対処は変革の機会になり得る。時間や人員が著しく限られる中、世界各地で人々は知恵を絞っている。ITがもたらす新たな社会基盤を生かす実行力と覚悟が問われる。

 2021年1月7日、1都3県を対象に緊急事態宣言が発出された。経営者も情報システム責任者も想定できた事態として相応の対策を講じているが、それだけでは不十分である。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の危機を変化の機会に変えるカギは「デジタル化」とされてきた。そのためには従来のIT利用とは異なる発想、解き方、姿勢が求められる。

世界の取り組みから「姿勢」を学ぶ

 COVID-19への確実な策はまだないが、世界各地で様々な取り組みがなされている。あまり報じられていない例を3つ紹介する。場所も内容も使う技術も異なるが、未曽有の事態に直面し、時間も人材も限られる中、手探りながらも知恵を絞って必要な姿を描き、生かせる技術や機構を集め、具体策を順次実行する姿勢は共通である。

バーレーン:ワクチン予約受付にモバイルアプリを利用

 バーレーンはCOVID-19向けワクチン投与の予約を政府が提供するモバイルアプリ「BeAware Bahrain」から受け付けている。PCを使えばCOVID-19関連情報を伝えるWebサイトから申し込めるが、普及しているアプリからでも可能にした。

 ワクチン予約受付は緊急性、公平性、実行性、安定性が強く求められる、ミッションクリティカルな業務である。ワクチンを確保できても、受け付けがうまくできなかったら意味がない。

 2020年3月から使えるBeAwareはコンタクトトレーシング(接触確認)アプリだが、接触確認の他、検査受付と結果連絡、陰性証明、入国時の手続きとそれに伴う支払い、統計情報の提供や国からの連絡など、COVID-19対策に関わる機能を加えてきた。

 そのアプリにワクチン予約受付を含めるのは自然な流れだ。それが可能になったのは、COVID-19に関して人々や国との間で必要となる一連の機能を順次追加し、利用実績を積み重ねることで、「ワンストップサービス」の場として定着してきたからこそである。

 Google Playなどアプリストアを見ると、BeAware利用者の意見に、アプリ提供者が個々に返信や回答をし、利用の促進や改善への意志を示している。アプリの提供、利用を通した対策、情報提供、改善といったサイクルがアプリストアの流通機構を含めて回る。既存の技術や機構を素早く使いきることは有事だからこそ重要になる。

米フロリダ州:イベント予約SaaSをワクチン予約に転用

 米フロリダ州はいくつかの郡で、ワクチンの予約受付にイベント予約SaaS「Eventbrite」を使っている。事業者などがイベントを設定して公開すると予約受付・当日受付、申込者への諸連絡、支払処理をしてくれるSaaSだが、公共サービスに適用した。利用するブレバード郡の広報担当者は「私たちが考えうる最も速く、最も簡単で、効率的な方法」だと語っている。

 フロリダ州は2020年12月末、65歳以上のすべての成人、医療従事者、介護施設のスタッフと居住者をワクチン接種の対象にすると発表した。だが州としての受付システムがないところに「先着順に接種」との情報が流れ、高齢者が駐車場で一晩待つといった事態が発生した。やむを得ず大半の郡は個別に電話で予約を受けているが、一部の郡がEventbriteに目を付けた。

 Eventbriteは受付数と残数をリアルタイムに照合するなど人気イベントの申し込みをさばくノウハウと大規模トラフィックを処理する仕組みを備える。イベント当日までのプロセスを参加者と実行者の双方に見せられる。