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時間の価値を認め、有効に使っていくには抜本的な時短が必要である。無駄は部門間にあることが多く、両者が信頼関係を築いて削減するしかない。社員がどう時間を使いたいか、個人を起点に再考することが大前提になる。

 すべての人が平等に持っている“資産”として時間がある。誰にとっても1日は24時間しかない。だが時間の価値をしっかり認め、資産と呼べるほど気を使い、有効に使っているかというと人や組織によって差がある。時間の価値を高めていける企業は業績においても社員の満足度についても時間を大事にしない企業との差を広げていく。

仕事の流れを見直し劇的な時短を

 時間価値を高める経営が重要であり、情報システムの責任者にはそれに資する取り組みが求められる。事業の形を根本から変える、いわゆるデジタルトランスフォーメーション(DX)も時間価値を高める。ただし本来のDXを進めるには経営者、事業部門、情報システム部門が足並みをそろえ、新しい事業像を描く必要があり、難しい。

 事業を当面そのままに、時間価値を高める手もある。抜本的な時短である。抜本的というのは顧客に商品やサービスを届け、対価をもらう一連の業務の流れ(バリューチェーンないしサプライチェーン)を見渡して無駄を見つけ、流れを短く、速くすることを指す。

 情報システムの側から見ると、業務の流れの実態を正しく反映した情報を用意し、関係者の間で共有させる。製造業を例にとると営業担当者が工場の状況を把握できれば工場の負荷を考えて受注できる。受注しそうな案件を工場がいち早く、かつ正確に知っていれば生産準備を進めておける。生産の進み具合を営業担当者に伝えられれば顧客への納期回答がきちんとできる。

 以上は基本中の基本だが流れのあちこちに分断があり、情報が表計算ソフトや紙の伝票に分散し、結局は現場で人手をかけて確認作業をしている企業は少なくない。分断と分散を放置し個別の処理を自動化するRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を入れても抜本的な時短にはならない。

関係者の間の信頼を築く

 基本中の基本に取り組みにくい理由は単純である。一連の流れに関わる各担当者、各部門は目の前の仕事で忙しく、流れの全体を見てどうすればよいかとは考えないからだ。「あの部門が頑固だからうちの部門が迷惑する」とは言えても「自分がいる部門が仕事をこう変えれば後の部門が楽になって全体の時短につながる」という発想はなかなか出てこない。

 情報システム部門が情報を預かる部門であり一連の流れを把握しているなら「こういう情報を渡すので全体の流れが良くなり大幅な時短になるはず」と提言できるはずである。「はずである」がそれには各事業部門に説明し、同意を取り付けないといけない。再び製造業を例にとるなら、営業担当者に受注見込みや正式に受注したときの内容をシステムへすぐ入力してもらうことになるが、営業担当者は抵抗する。

 工場側も同様である。受注生産の場合、顧客に納品する際に顧客が検収するために必要な仕様や構成の情報を用意せず、営業担当者が代行している場合がある。工場側でやれば全体として楽になるが、工場の担当者は抵抗する。

 単純だが厄介な障壁を取り除くには事業部門同士、さらに情報システム部門との間に信頼関係を築くしかない。情報システム部門は良かれと考える時短策を思い切って提案すると共に、日ごろから事業部門が出してくる様々な要求をよく見て、重要なものには無理をしてでも応え、関係を良くしていく。

 部門間の信頼関係は上から命じて築けるものではない。営業部長が「工場も大変だからこの仕事はお前たちがやるように」と指示すれば担当者はいったん従うが、言われたからやるだけでは雑になりがちだし、部長が交代すればすぐ立ち消えになる。