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ビジネスを組み替えられる(コンポーザビリティー)企業は業績が良いという。だが業務や人、ITが密接に結合している日本企業がそうするのは難しい。複雑に絡み合う業務と情報システムを解きほぐすことから始めるしかない。

 ITリサーチ大手の米ガートナーはITやその使い方に関して次々に新しい言葉を打ち出してくる。定着する場合もあれば流行せずに消えることもある。最近ガートナーが力を入れて説明し、2022年における優先課題としている「ビジネスコンポーザビリティー」は日本でほとんど使われず消えていくに違いない。ただしそれは問題である。

臨機応変にコンポーネント組み替え

 ガートナーによるとビジネスコンポーザビリティーとは「人、プロセス、テクノロジー、さらには物理資産など、あらゆるビジネス資産をモジュール化し、リーダーがディスラプションへの対応としてこれらを迅速かつ容易に、また安全に再構成し、新たな価値を創出できるようにするアプローチ」である。つまり事業環境の変化に応じてビジネスを構成している業務やそのプロセス、関わる人、関連する情報システムといった「コンポーネント」を臨機応変に組み替えていくことを指す。

 ガートナーの「2022年CIO/テクノロジ・エグゼクティブ・サーベイ」(2021年5月から7月に調査、2387社のCIOが回答)によると「ビジネスコンポーザビリティーが高い企業ほど、自社のビジネスパフォーマンスが同業や競合他社と比較して高いと回答した割合が高く」なった。「コンポーザビリティーが高い」企業とはガートナーが定義した3点について「広く活用している」「全社的に広く活用している」と答えた企業であり150社が相当した。

 1点目は「コンポーザブル・ビジネス・アーキテクチャー」で、どのような業務プロセス、人材、情報システムを持ち、それらがどう関係し、今後どうしていくか、といったことを整理した青写真を意味する。それがあればビジネス部門とIT部門がチームを組み、コンポーネントを組み替えていける。

 2点目の「コンポーザブルテクノロジー」はコンポーネントを「迅速かつ容易に統合できる」ためのITを指す。ガートナーは「チーム間のコラボレーションやデータ/アナリティクス/アプリケーションの統合」「反復型のデリバリー(アプリケーションを開発して利用すること)」「適切なデータの可用性」などを挙げる。これらを実現するツールをコンポーザブルテクノロジーと総称する。統合対象のコンポーネントには人の活動や業務まで含む。

 3点目の「コンポーザブルシンキング」をガートナーは「不確実性を脅威ではなく機会として捉え、ビジネスを主導するためのマインドセットを醸成すること」と定義するが分かりにくい。要するにビジネスやそれを支えるITをコンポーザブルにしていこう、と考え、実行する姿勢をこう呼ぶ。コンポーザブルシンキングができる企業をガートナーは「高い信頼に基づく組織」「継続的に学習する組織」と説明している。