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米アマゾン・ドット・コム上の出店者を買い取り、急成長する新興企業がある。各種データを分析して優良店を選び、検索対策を含む運営支援と買収を提案する。オープンで公平な市場を整えたアマゾンが新事業を生む基盤になっている。

 社長とIT部門長が気楽に話せる題材としてITを使い急成長するスタートアップはどうか。ITはともかく「高評価額」や「急成長」は社長の関心事である。

 2018年に創業、3年で評価額を30億ドル(約3200億円)以上に高め、2021年2月に7億5000万ドル(約800億円)の資金を調達した米国のスタートアップがある。社名はセラシオ(Thrasio)。2020年に5億ドル(約520億円)超を売り上げ、1億ドル(約105億円)の利益を出したとされている。

 同社のWebサイトを開くと“We buy and grow Amazon businesses”という宣言が出る。投資家から資金を集め、米アマゾン・ドット・コムのマーケットプレイスで商品を売る出店者を買収する。検索対策などアマゾン上のマーケティングを強化し、買った出店者の売り上げを伸ばす。

 米テッククランチの報道によるとセラシオは2021年2月までに6000件もの候補を評価、1万4000の商品分類において売り上げが最上位の商品を持つ出店者を100件近く買収した。セラシオのサイトには「通常の買収であれば35日以内で完了します」と書かれている。評価件数も買収にかかる期間もにわかには信じがたい数字である。

レビューで高評価の出店者を買収

 売れ筋を持つ出店者を素早く買収できる理由はマーケットプレイスの特徴を最大限に活用しているからだ。特徴とは前回本欄で述べたアマゾンの特徴そのもので「お客様を大事にする」「データ駆動」「周囲を巻き込むプラットフォーム」を指す。マーケットプレイス出店者はアマゾンと同様の顧客志向を求められる。例えばアマゾンが出店者に資金を貸し出すサービスでは「アカウント健全性」が問われる。健全性は「購入後のキャンセル率」「出荷の遅延率」「商品の不良率」などから算出するとされている。

 計測できるのは出店者のアマゾン上の活動が記録されるからだ。フルフィルメント・バイ・アマゾン(FBA)と呼ぶ仕組みを使う出店者にはサイト閲覧回数・購入数・売上高と推移などを確認できるリポートが届く。

 FBAは商品を用意すればそれ以外をアマゾンが代行するサービス。商品情報を登録、アマゾンの物流センターに納品すれば、ページへの集客、受注、配送、顧客応対、代金回収までアマゾンがやってくれる。顧客志向のアマゾンが育てたEC(電子商取引)プラットフォームを出店者はすぐ使える。

 セラシオは買収先をFBA利用者から探す。検索結果が上位に示され、高評価のレビューが付いている出店者を選び、FBAリポートなどのデータを分析、買収の可否を判断する。評価モデルを用意し、ある程度自動化しているとみられる。