全2521文字
PR

社会の課題を本業の中でこなし、達成していくことが企業に求められる。決済支援を手掛ける米ストライプの炭素除去への取り組みは参考になる。「世界は、顧客は、何を求めているかを問う」という同社の社風が重要である。

 「社会課題に積極的に取り組んでおり、収益面でも社業に大きく貢献している」と答えた企業は総回答数1215件のうち10.2%にとどまった。しかし、そうした企業の中で、5年前に比べ増収増益を達成している割合は66.1%と高かった。本業の中で社会課題をこなし、成果を出している企業は高業績という傾向が見て取れる。日経BP総合研究所が2021年8月に実施した「コロナ禍における新事業・新技術に関するアンケート」で得られた結果である。

 SDGs(持続可能な開発目標)に挑もうとする企業は多いが、課題達成に本業の強みを生かせれば業績も良くなる可能性が大きい。SDGs関連の担当者任せにせず、経営陣も事業部門も情報システム部門も考えてみる価値がある。その際に必要となる姿勢を米ストライプの事例から3点、学んでみよう。

 同社は決済支援サービスStripeをEC(電子商取引)事業者に提供している。EC事業者はStripeのAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を呼び出すだけで、クレジットカード決済、請求書の発行、未回収金額の集計などができる。

 さらにStripe Climateという仕組みを使うと決済額から一定の割合で炭素除去を手掛けるスタートアップへ寄付ができる。2021年12月の発表によると世界40カ国、1万5000以上の事業者がClimateを利用している。ストライプでHead of Climateを務めるナン・ランソホフ氏にどう取り組んでいるかを尋ねた。

(1)幅広い相手と組む

 社会課題への対処にあたりストライプはEC事業者などの顧客、炭素除去のスタートアップや専門家といった幅広い相手と組んでいる。コラボレーションはClimateに限らない。「ストライプが進めるどのプロジェクトにおいても多くの意見や人、技術が欠かせない」(ランソホフ氏)。

 まず本社の戦略担当者が気候変動対策に100万ドルを拠出すると発表、支援先を探し始めた。それを知った200万と言われるストライプの顧客から支援に参加したいという要望が寄せられた。つまり寄付をする「機能(プロダクト)のアイデアはStripeの顧客から出てきた。顧客の多くが気候変動対策に参画する方法を探していたからだ」。

 支援先を選定するために気候変動の専門家からなるアドバイザーチームを結成。「科学者や学識者と一緒に活動することは重要で、何ができ、何ができないかについての知見を得ている」。

 ランソホフ氏自身もストライプから見ると協業相手の1人だった。自動運転のNuro、環境関連のO-PowerやNestといった企業で経験を積んできた同氏はClimateの準備のためにストライプに入社した。「2018年のIPCC報告書を見て炭素除去に興味を持った。ストライプは多くの顧客とプラットフォームを抱え、気候変動対策に熱心な経営陣がいる。Climateを進めてみて、ストライプが炭素除去ビジネスの規模を拡大できると確信している」。