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優れた仕組みはAI(人工知能)を使うがそれを感じさせない。「これなら任せられる」と事業者が実感する解決策を提供する。要所要所に人が参加し、マシンと違和感なく協調できる。

 「うちもAIで何かやってほしい」と経営者から曖昧な要請が来て困った、という逸話が時折取り沙汰されるが経営者が期待すること自体は悪くない。好機と受け止めてプロジェクトを起こしたいところだ。経営者の言う「何か」は新規事業であったり業務改革であったりするがいずれの場合でもビジネス(事業または業務)をデザイン(設計)しなければならない。

 デザインの勘所を知るために自社とはまったく異なる業種業態の先行事例をひもとくことは有用である。同業他社あるいは同じ業務の事例を調べると二番煎じになりかねない。今回は米グーグルが2019年5月から始めた小規模事業者向け電話接客サービス「Call Joy」を取り上げる。まだ日本で提供されていないサービスだが「ことづくり」(利用者が満足する体験を届ける)、人とマシン(AIやデバイス)のコラボレーション、データ駆動といった勘所が盛り込まれている。

煩雑な電話接客をマシンが代行

 Call Joyは小売店、レストランなど小規模事業者の電話接客を代行するサービスである。顧客からの問い合わせ電話に対する各種の説明、予約受付をCall Joyが合成音声を使ってこなしてくれる。音声応答に加え、顧客にショートメッセージを送り、受付サイトのアドレスを伝えることもできる。人が答える必要がある問い合わせの場合、店主など事業者側に電話を転送する。繰り返しかかってくる迷惑電話を認識し、出ないようにする機能もある。

 サービス料は月額定額39ドル。小規模事業者はこれだけ払えば煩雑な電話接客からほぼ解放される。しかも通話の内容や回数などをCall Joyが報告してくれる。電話接客代行サービスそれ自体は昔からあったが、全米で3000万社以上もある小規模事業者が使いたくなる内容と料金を提示することがこれまで難しかった。

 Call Joyから学ぶべきビジネスデザインの勘所はまず「ことづくり」の徹底度合いである。電話接客という狭い業務に限定する半面、それをしっかり代行できるビジネスサービスに仕立てている。店長など小事業者にとっても、問い合わせてくる顧客にとってもごく普通にやり取りができる。業務の一部を自動化したものの、抜けがいくつかあり、いちいち人手で補うことになるなら電話応対を任せられない。

 顧客も小規模事業者もスマートフォンさえ使えれば予約や応対ができる。Call Joyの中核技術は機械学習を使った音声合成であり、うたい文句にも「Answer with intelligence」と掲げているがAIが何かしているとは気づかれないほど自然な音声対話ができるという(ただし機械が応答していると分かるようにしている)。人(顧客・事業者)とマシン(スマートフォン・AI・クラウド)がしっかり連携している。