人間と「生成AI」が協調して仕事をこなす。こうした世界が一気に出現した。曖昧な問いにも提案や関連情報がすぐ返されるので、深く広い思考につながる。身近なツールを実際に使ってみれば、協調の真価と新しさを体感できる。
人とAI(人工知能)が対話し、共に学び、考え、仕事を進める。こうした人とAIの協調作業が一気に実用化した。テキストや画像、音声を創り出せる「生成AI」が、日常の仕事で使うアプリケーションやシステムに組み込まれつつあるからだ。人がそれらを使うと、生成AIが提案や関連情報を瞬時に複数出し、次の問いを促してくれる。
人はさらに問い、判断や調整をしながら成果物を生み出していく。単独で仕事をするより圧倒的に早く、広がりが増す。日々の仕事に自然に溶け込み、手順や解き方を変えていくので、新鮮であり思考と行動に刺激を与える。
この変化を実感するには、日常の仕事か、それに近いところで、生成AIが組み込まれたアプリケーションを触ってみるのが一番だ。とはいえ数点の概要を読んでいくだけでも仕事が変わる様子はつかめる。札幌スパークルの桑原里恵氏に生成AIの醍醐味を体感できる事例を8点選び、解説してもらった。あえて身近で使用が可能な米マイクロソフト製品以外から選択した。
著名アプリが相次いで組み込み
2023年3月に入り、米オープンAIはテキスト生成AI「ChatGPT」のAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を公開、先行して導入に取り組んできた事例を複数紹介した。
カナダのショッピファイが運営する電子商取引サービス「Shopify」の利用者向けアプリ「Shop」を使うと、対話をしながら欲しい商品をすぐ発見できる。考えが定まっていなくても「こういうものはありますか」と気持ちを素直に言葉にしていくだけでよい。
Shopifyを使っている店舗群を横断して商品の候補を探し出しているのだが、利用者が共通の言葉や分類を意識せずとも、速やかに候補が出てくる。優秀な店員に話しかけ、たちどころに商品を並べてもらう感覚に近い。
米インスタカートの買い物代行サービス「Instacart」は利用者からの食事に関する質問に答える「Ask Instacart」という機能を加えた。「子供の健康を考えたらどんなランチがよいか」といった、親同士が交わすような問いに応答してくれる。利用者は今の気分や知りたいことを伝え、やりとりしていくうちに「今日のランチはこうしよう」という行動と買い物のアイデアを得て、買い物を頼む。ChatGPTと独自AIを使い、Instacartの提携店の商品データを使用する。
6000万人以上が学習に使う米クイズレットの「Quizlet」はChatGPTのAPIを組み込み、学生が楽しくチャットしながら、学習資料を読み、質問し、理解を進めていけるようにした。理解が足りず、的確に質問できなくても、聞いては答えてもらうということを繰り返すうちに理解すべき対象の全体が見えてくるので本当に知りたかったことを質問できる。