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事業の創出にあたり「データで何を可視化しているか」と問うことが重要だ。それによって事業の軸が定まり、どこでどう強みを出すかを明確にできる。米ウーバーテクノロジーズの事例から、何を可視化して事業を設計したのかを探る。

 「何を可視化しているか」。ITを使いつつ、新たな事業を創出したり、以前からある事業を変革したりする際、この問いが極めて重要になる。

 答えようとすると、事業における何を対象に、どういう状態や変化を見えるようにするのか、可視化したデータを基点に事業やサービスをどう展開するのか、といったことを考えなければならなくなる。すなわち顧客に価値を届けるために、事業のどこに強みを持ち、何に重点を置き、自ら何を担い、パートナー企業に何を託すか、といった事業の構造が決まってくる。

 事業に関する意思決定は経営者や事業部門の長が下すわけだが、情報システム部門や同部門に協力するIT企業は「何を可視化しているか」と問うことで事業づくりに貢献できる。

米ウーバーがスーパーアプリを発表

 米ウーバーテクノロジーズが2022年3月1日に発表したUber Exploreという新機能を例に、同社が何を可視化して事業やサービスを組み立てているかを見てみよう。Exploreの提供はまず、米国の14都市とメキシコシティから開始されている。

 Uberアプリを使って車に乗っている利用者に対し、Exploreは近くのエンターテインメント、例えばディナーやライブショーなどを勧めてくれる。利用者は「今晩こんなイベントがあるのか」といったように、提示される情報との出会いを楽しめる。興味を持ったならその場で予約し、当初の用事を済ませた後、あるいは途中でイベントに向かい、参加できる。後日の予定をそのまま立てることも可能だ。

 利用者は思わぬ情報に接して車中の時間をわくわくして過ごすと共に、次の移動のシナリオを自分で書き、行動していける。Exploreはこのような移動の新体験を提供する一種のメディアと言えるだろう。

 Exploreはさまざまなサービスを組み合わせている。利用者の嗜好に合ったエンターテイメントの推薦には配車のUberや食品配達サービスUber Eatsの利用履歴が生きる。参加したイベントなどの決済はUber Wallet&Paymentでこなせる。かねてより連携してきたレストラン予約のYelp、ライブイベント推奨のPredictHQといったサービスも取り入れられている。

 ExploreはUberを「スーパーアプリ」にする試みと言える。スーパーアプリとはさまざまなアプリを一元化し、使い勝手を高めたものだ。日常生活のあらゆる場面で使え、チャットや電話、音楽配信、ゲームや読書、買い物や決済といったことを複数のアプリをいちいち開かずにスーパーアプリから実行できる。複数アプリ上の行動履歴が集まるのでお互いを強化しやすくなる。

 もちろん複数のアプリをかき集めただけでは駄目で顧客から見た必然性が欠かせない。利用の場面、目的、行動の流れにおける一貫性を維持しつつ、アプリ群を連携しなければならない。