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報道やツイートを並べると人々や社会の動きが立体的に伝わる。そうしたタイムラインは人々の記憶や体験と相まって雄弁に当時を物語る。生のデータによる「可視化」の醍醐味であり、ビジネスにも通用する。

 NHKの『東日本大震災あの日から10年』と呼ぶ特設サイトに「東日本大震災タイムライン」というページがある。経営者の方も情報システム責任者の方も未見だったらぜひご覧いただきたい。同ページの趣旨をNHKは「東日本大震災と東京電力福島第一原発事故で起きたことを、2011年3月11日の発災から72時間を中心に、データと証言をもとにタイムライン形式で伝えていきます」と述べている。

 同ページは「震災」「原発事故」「メディア」「私のタイムライン」「ソーシャルメディア」の5つに区切られ、時刻ごとのデータや証言が掲載されている。「震災」には政府や官公庁の発表内容が、「原発事故」には調査報告や報道が、「メディア」には主にNHKニュースが並ぶ。「私のタイムライン」には被災者の体験談や取材陣の声が記載され、「ソーシャルメディア」には震災当日、Twitterに書き込まれた様子や思いが再録されている。

 画面に5本のタイムラインが並ぶだけで加工も解析もないが、複数の視点から得られたデータが刻々と進む時間の経緯に合わせて流れていくのを見ていると様々な気付きがある。

 震災発生前、震災直後、原発事故の発生前後といった節目ごとに5本のタイムラインを見るとデータ間のずれや様子の違いが分かる。それは事態が伝わり、知るまでの時差であり、起きていた事態の姿そのものでもある。

 5本のタイムラインを流れる速さも事態の緊張度を表すかのように変化する。震災翌朝に首相が原発を訪問したときの「原発事故」タイムラインには出来事が慌ただしく並び、「メディア」や「ソーシャルメディア」の様子の移り変わりよりも動きが速い。

 眺めているうちに出来事の全体が急に見えてくる時がある。東日本大震災タイムラインに流れる内容は当時の報道で知っていたり実際に体験したりしたものが多く記憶にあるが、複数のタイムラインから見えてくる動きに当時の体験や行動の記憶が結びつき、点と点がつながり、面から立体へと理解と認識が広がっていくような感覚になる。羅列にもかかわらず立体感が出てくるとともに起こったことの全体が雄弁に語られている印象すら受ける。

 5本のタイムラインの中で一番右にある「ソーシャルメディア」(ツイート)は文字通り、人々のつぶやきだが当時の様子が顕著に映し出されておりリアリティーがある。自ら発信し、探し、伝達し合えるTwitterが持つリアルタイムの拡散力は大きい。震災直後、電話がつながらない状況下でTwitterは被災地と見守る人たち双方の情報源になり救助や救援に役立った。