全2164文字
PR

個人のデータを使って事業をする場合、社会に受け入れてもらう必要がある。法律を守っていても非難が寄せられ、事業を中断する事態が起きている。備えとして、実務家が集まり、倫理面の問題を事前に洗い出すツールを作った。

 経営者が出す複数の要求に対して、たとえ要求と要求の間に矛盾があったとしても、現場としては応える努力をしなければならない。例えば「長年集めてきた顧客データを生かして新事業を生み出せ」という要求と「コンプライアンスは極めて重要。個人情報保護法をはじめ法に触れないように」といった要求の両立は簡単ではない。

 厄介なことにたとえ法を守っていたとしても「個人に関わるデータの使い方として認められない」といった指摘が寄せられ、対応次第ではインターネットで非難の声が吹き荒れる“炎上”状態になりかねない。実際に新事業・新サービスの提供や実験を中断せざるを得なくなった事例が報告されている。

 機械学習やIoT(インターネット・オブ・シングズ)により、個人のデータを大量に集め、分析することが可能になってきたが、使い方を社会や利用者が受け入れてくれるかどうかについては注意が必要である。しかもほぼ同じ取り組みにもかかわらず、ある件では非難が殺到し、別の件ではそうならない、といったことが起きている。

 これはデータ活用における倫理の問題である。ITリサーチ大手の米ガートナーはかねてよりデジタルビジネスを進めるために「倫理スキル」が欠かせないと指摘していた。法的あるいは自主的な規範を自ら考え、決めていけるスキルである。もっともな指摘だが具体的にどうすればいいのか。

 企業が始めようとしているデータ活用と新事業について、倫理面から問題がないかどうかを事前に検証できるツールがある。一般社団法人日本データマネジメント・コンソーシアム(JDMC)のAI・データ活用のためのコンプライアンス研究会がつくりあげた「データ活用における『つまずきポイント』の洗い出しチェックリスト記入シート」がそれである。

表 データ活用における「つまずきポイント」の洗い出しチェックリスト記入シート(一部)
「法的に問題がなくても“炎上”する危険」を防ぐ(出所:『攻めのデータ活用の「つまずきポイント」に備える49のチェックリスト』(日本データマネジメント・コンソーシアム AI・データ活用のためのコンプライアンス研究会著、日経BP))
表 データ活用における「つまずきポイント」の洗い出しチェックリスト記入シート(一部)
[画像のクリックで拡大表示]

 同研究会はこのほど、使い方を説明する書籍『攻めのデータ活用の「つまずきポイント」に備える49のチェックリスト』(日経BP)を発行した。同書にはチェックリスト記入シートの表計算ソフト用データも含まれている。