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LINEを巡る騒動を受け、リスク回避策を探っても真の解決にならない。技術と社会基盤の可能性を信じ、徹底的に使っていく姿勢が求められる。実現したい全体像を描き、情報の安全機構を最初から組み込もう。

 「うちは大丈夫か。調べて善後策を報告せよ」。世間を騒がせる出来事が起こると経営者は情報システム責任者にこう命じる。直近では「LINEアプリ」の利用と海外への開発委託が問題視されている。

リスク回避は成り立たない

 運営元のLINEは中国技術者の閲覧権限の停止や委託先の見直し、国内へのサーバー配置といった対策を発表したが、自治体を中心にLINEに基づくサービスの利用停止や提供見合わせが相次いでいる。企業も同様で、LINE利用の有無にかかわらず海外への開発委託や海外サーバー利用を見直し、リスクを回避しようとする動きがある。

 しかし多くの人々や事業者をつなげ、データを蓄積していく、LINEのような社会基盤を生かして情報システムを作る場合、「危ないから使わない」というリスク回避策は成り立たない。目指す姿があり、そこにLINEを組み合わせる。普及しているLINEだから選んだのに利用を避けたら価値は得られなくなる。

 例えばLINEと厚生労働省が実施した「新型コロナ対策のための全国調査」。2020年3月から複数回、8300万人超のLINE利用者に依頼し、2400万人が回答した。これだけの規模となる調査の代替策は見つけにくい。

 同じことは先進性が高い技術を駆使して特異な分野を狙う新たな挑戦にも言える。そうした技術を探し出すことが実現の一歩になる。妥協すれば中途半端になり取り組む意味が無くなる。

 新たな挑戦にあたって特徴ある技術にこだわれば、扱える技術者や委託先が希少になり、海外を含む広い地域から調達することになる。高度な技術を担う貴重な人材を長期に渡って専属で契約するのは難しく、スポットでのチーム合流もありえる。多様な就業スタイルを受け止めざるを得ない。

 これらをリスクと見なして回避策をとると、旧知の技術者と管理手法に合わせて手堅い技術を使い、作業場所やネットワークを閉じることになりかねない。技術者や委託先が技術選択の制約になって先進的な事業やサービスを実現できなかったら意味がない。