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経営や事業の方針が決まればそれを担う業務とシステムの姿も決まってくる。発注者の言いなりにならない設計者と組めば、あるべきシステムを見いだせる。発注者と設計者が業務の流れを見極めるためにデータモデリングが必要だ。

 IT関連の企業ではなく一般の企業で情報システム責任者を務めた人が書いた本は少ない。ITが本業ではない、異動して別の立場になった、貴重な経験はしたものの教訓を整理して書くのは難しい、といった理由からだろうか。

 2022年4月に発行された『Web世代が知らないエンタープライズシステム設計』(IT勉強宴会著、日経BP)は例外と言える。著者9人のうち2人、情報システム責任者の経験者がいる。

製造業のIT責任者が創意工夫披露

 1人は髙田富明氏で製造業の経営企画部門と情報システム部門を経験し、5年ほどシステム責任者を務めた後、フリーランスのSEとして活動している。同書で髙田氏は企画を立案する際にアリストテレスが考案した型を使うことを勧めている。髙田氏は企画立案を「自社や顧客を利するための思い付きやアイデアを経営者や上長、意思決定者の判断を仰ぐに足る行動計画にまで練り上げること」と定義し「考え抜かれたしっかりした企画が立案されたなら、もうその時点で企ての成功は決まったようなもの」と述べている。

 さらに髙田氏はIT業界の技術者に向けて、システム責任者がどう意思決定するのかを説明している。責任者は「帰属する企業の側に立ってITを目利きする。『ウチの事業を強くするにはどうすればよいか』『ウチの業務をどう回すと楽になるか』『そこにITは何ができるか』と常に問うている。その上で各企業が置かれた文脈において『ウチにとっての最善』を見つけ出し、行動に移している。ITにとっての最善ではない」。技術者は一緒に仕事をする顧客の事業にとっての最善を考えないといけない。

 もう1人は中山嘉之氏で製造業の情報システム部門の責任者を務めた後、コンサルティング会社に移った。同書で中山氏は「ユーザーヒアリングのまんまシステムを作ってはいけない」と書いている。これは「私の31年に及んだ、製造業の情報システム部門における活動の中で座右の銘の1つとしてきた言葉」であり、「情報システム部門長になってからは後輩たちにことあるごとに伝えてき」たという。

 現場のヒアリングはするがシステム担当者は設計者として「多くの物事や一連の働きを秩序立てた全体的なまとまり」に仕上げなければならない。そのための技として中山氏はデータモデリングを勧める。同氏はデータモデラーとしても知られ、書籍『システム構築の大前提 ITアーキテクチャのセオリー』(リックテレコム)も書いている。