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「ここを解決したら全体が良くなる」。業務プロセスにはそうした要所がある。その難関を超えるために画像認識や機械学習といった最先端の技術を尽くす。新技術を使う挑戦には不確実性が付いて回るが成功時の効果は極めて大きい。

 業務プロセスの改革は経営者も事業部門や情報システム部門の担当者も考え、意見を出せる領域である。以前から様々な取り組みがされてきたがコンピュータービジョン(画像処理)や機械学習といった先端技術を使うことで業務プロセスを飛躍的に改革できる可能性がある。2021年4月に報道ないし発表された典型例を見てみよう。

感染の有無をスマートフォンで判断

 高周波やマイクロ波の技術を持つ独セミックRF(Semic RF)は新型コロナウイルスに感染したかどうかを3~5分間で判断できるスマートフォンアプリ「セミック・アイスキャン(Semic Eyescan)」を開発している。ニューズウィーク日本版が4月14日報じた。

 利用者はスマホのカメラで自分の目の写真を撮り、データを送る。セミックRF側で画像処理をし、機械学習を使って判断、結果をチャットあるいはQRコードで送り返す。100万人から一斉にデータを送られてもほぼ同時に処理をこなせるとしている。

 感染者の多くが結膜炎を起こすことを利用して判断する。7万人以上でテストし判断の精度は97%という。医療製品としての認可手続きは完了していないが実用化されれば新型コロナウイルスの検査や診断、そして診療のプロセスを一変させる可能性がある。

 スマホだけあればよく、いつでもどこでも誰でも検査できる。検査場や病院にわざわざ移動し順番を待つ必要がない。コンサートやスポーツなどのイベント入場者の一斉検査も可能になる。乳児から高齢者まで年齢による制約はほぼないため、自宅から出にくい、あるいは保護や介護が必要な人でも検査できる。医師とのオンラインチャットと連携すれば手元のスマホから検査、診察、必要な対処まで一貫したケアを各自の居場所で受けられる。

 このアプリは欧州の一般データ保護規則(GDPR)に適合している。感染判断プログラムが自動的にデータを削除するためデータは個人のスマホにだけ残る。医療に直結する処理の速さ・簡便さと安全性・信頼性を両立できればプロセス全体の改革を進めやすい。

自動溶接の不良を自動検出

 農業機械最大手の米ディア・アンド・カンパニー(通称ジョン・ディア)は工場内のロボットアームによる自動溶接の不良を画像処理と機械学習を使って自動特定するシステムを試験導入している。技術協力した米インテルが2021年4月1日に発表した。

 自動溶接の様子を溶接カメラ(米メルトツール製)と光学検査装置(台湾ADLINKテクノロジー製)で構成するエッジ側で把握し、インテル製ビジョン・プロセシング・ユニット(VPU)側で画像データを処理、溶接強度を弱める多孔性を検出する。VPU上のニューラルネットワークに多孔性を持つ溶接部分の写真を事前学習させておく。

 多孔性をリアルタイムで検出するため不良があった場合、ロボットアームによる溶接を自動停止し、修理の担当者へ通知し、溶接をやり直す。完成品の品質を下げる溶接不良を最終組み立ての前に発見し対処できれば製造プロセス全体にとって大きな改革になる。

 製造の全プロセスの中で溶接はごく一部だが、そこにおける問題解決にこだわり、最新技術を適用したことで、生産プロセス全体の安定と高品質を担保する道が開けつつある。

 これまでは熟練者が溶接の後に手作業で多孔性を検出していた。ジョン・ディアは世界52拠点に工場を持つが、組み立てラインにロボットを導入しても溶接不良の問題が残る限り、自動化や効率化、品質確保に限界があった。そこでこれまで蓄積してきた検査の結果データや写真を利用、今回のシステムを具体化した。

 画像処理と機械学習の適用にあたっては煙、火花、熱が発生する溶接現場にカメラと検査装置を設置し、動かすという難題があった。そこでエッジを担当したメルトツールとADLINKテクノロジーが溶接の環境に耐える機器を用意した。