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新型コロナ感染症への対応はワクチン接種から活動再開という段階に入る。ITによる社会基盤は人々や諸活動を結びつけ、有事の各段階で力を発揮する。例えば米ウーバーテクノロジーズは「世界を動かす」新方針を発表した。

 以前はCSR、最近はSDGsやESGといった略語が企業経営で取り沙汰されるが要するに社会に向けて何をするかということである。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行という有事に際し、経営者をはじめとする企業人はまさにその点を問われている。

 今回の有事への対応は国によって状況や進展が異なるものの大きく見れば、ロックダウンなどによって人々の動きを制限する段階からワクチン接種によって日常を取り戻し、社会の活動を再開する段階へ移りつつある。

 具体策としてワクチン接種の予約と実施はもちろん、国境を越えて移動しやすくする接種証明書の発行、接種が遅れている地域へ向けた余剰ワクチンの融通、接種に抵抗感を持つ人や接種に出かけることが難しい人への働きかけと支援、などが行われている。

 有事対応の各段階でITが果たす役割は大きい。モバイルデバイスとインターネットは人々や諸活動を結びつけ、新たな社会基盤として、行動制限に伴う在宅勤務や学習を支えた。有事において社会基盤の上で何ができるのか、企業の情報システム責任者は引き続き考え、動く必要がある。

中核機能で医療や生活を支援

 有事対応と社会基盤の役割を考えるための事例に米ウーバーテクノロジーズがある。同社の配車アプリとサービスは車の予約と移動に関する最も知られ、浸透した仕組みになっている。

 ウーバーのダラ・コスロシャヒCEOは2021年4月28日、“Go anywhere, get anything”と題した方針を打ち出した。名称から分かる通り、新型コロナ禍の後に来る活動再開を見据えている。同CEOは「世界を以前より良いノーマルに戻す。そのための新機能の開発に取り組んできた」と語り、配車など移動支援(Go)で4件、生活用品などの配送支援(get)で5件の新機能や提携を発表した。

 例えばワクチン接種を手掛けているドラッグストア大手の米ウォルグリーン・ブーツ・アライアンスと組み、ウーバーの配車アプリから接種を予約し、接種する店舗と自宅を往復するための車を時間指定で手配できるようにした。日常生活の再開を意識し、1人の運転手が複数店舗への買い出しを手伝う、最大1時間まで空港で待機する、週末に使うレンタカーを届ける、移動途中で食品をピックアップする、といった新サービスもある。

 4月の方針発表の前からウーバーは医療の分野に取り組んできた。2021年1月にはワクチン接種の促進に向けて製薬会社の米モデルナと組み、ウーバーのメッセージングアプリを使ってワクチン情報を提供すると発表した。

 2020年の早い時期からウーバーは医療従事者支援を数段階にわたって打ち出し、医療の現場と自宅を往復する移動サービスを無料提供してきた。2020年12月には貧困世帯あるいは無保険者向けにワクチン接種を受けるための往復を支援すると発表。今年に入って複数の医療保険会社や非営利の社会福祉法人などと連携し、低所得層や高齢者世帯に向けてワクチン接種の送迎を手伝うとした。一連の移動支援は無料ないし割引料金で実施されるが、いずれも1000万回、報道では6000万回もの移動を支援するとされている。

 医療との関わりはコロナ禍によって突然生まれたものではない。医療機関と患者をつなぐ配車サービスをウーバーは2018年から始めており、移動手段の問題で適切な診察を受けられない事態の解決に取り組んできた。ウーバーによれば、病院の診察予約とそれに合わせた配車手配を同時にすることで予約に間に合わない件数を減らせたという。病院のスタッフと運転手が通話でき、患者が乗ったかどうか、今どこにいるのかを確認できる。

 指定した利用時刻に合わせて車などサービスをマッチングする、状況を確認できる――。いずれもウーバーの持つ基本機能であり食品配送のUberEatsに応用されたが病院への移動にも効果を上げた。