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プラスチックなど廃棄物や無駄な在庫・物流の削減は社会の課題である。AR(拡張現実)やPoD(オンデマンド印刷)を使うことで対処できる。顧客体験に配慮し取り組みの全体像を描き、一気に進めなければならない。

 多くの経営者がSDGs(持続可能な開発目標)など社会課題にどう応えるかで頭を悩ませているがおそらく情報システム責任者には相談しないのではないか。事業とITが密着し、事業活動の多くがインターネットのような社会基盤に載っている今、社会課題への取り組みにおいてITは無視できない。

 特に店頭の応対や商品提示といった顧客との接点を実店舗とITの組み合わせで充実させる「オムニチャネル」は流通・物流など社会の仕組みと密着している。ここを変えることで社会課題に応えていける可能性がある。

年間56トンのプラスチックを削減

 花王は2021年10月以降、ヘアカラー・ヘアマニキュア全製品において「毛束色見本」の提供をやめる。顧客が色を選べるようにプラスチックでできた毛束の色見本を店頭に並べていたが、スマートフォンのAR(拡張現実)アプリに置き換える。

 10月以降、見本の替わりにQRコードが付いたPOP(店頭広告)を置く。スマートフォンでQRコードを読み取ると、商品に合わせた髪色になった自分の顔を顧客は確認でき、ヘアカラーの仕上がりが分かる。QRコードは商品パッケージにも印刷する。

 花王によれば毛束色見本を全廃することで「多い年では年間約56トン使用していたプラスチックが削減」される。当然、これだけの量のプラスチック見本を作り、在庫を抱え、店頭に届ける必要もなくなる。

 花王は台湾パーフェクトのARメーキャップアプリ「YouCam メイク」のモジュールをヘアカラー向けに使う。YouCam メイクは2020年に世界で5億件以上ダウンロードされたアプリで、様々なスタイルのメイクを自分の顔に重ねて表示できる。

 店頭における利用体験に新しさと楽しさを提供しつつ、懸案だったプラスチック削減を狙う。花王は2020年10月に発売した一部の商品で毛束色見本をやめ、ARアプリを導入していた。顧客の反応が良かったとして全商品における見本廃止を早めることにした。

 スマートフォンのARとメーキャップは相性が良く、これまでにも様々な取り組みがあった。ヘアカラーでは仏ロレアルが2018年にARを使ったお試しサービスを始めていた。ロレアルはARを開発していたカナダのモディフェイスを同年買収し、話題になった。花王はARをプラスチック削減という社会課題に適用したことになる。