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企業は事業のためにコンテンツをつくり、届けるべき人に確実に届けたい。それを可能にするメディアとしての価値を米アマゾン・ドット・コムは持つ。事業やブランドの成否を左右するため、利用については経営者が判断すべきだ。

 米アマゾン・ドット・コムを特定の業種に位置付けることはもはや難しい。膨大な商品を扱う電子商取引の市場であり最先端の物流を持つ巨大流通業である。同時にクラウドやデジタルコンテンツを提供するIT企業でもありGAFAの1社として数えられる。さらによく見るとアマゾン自身が「メディア」になっていることに気付く。

 ここでメディアとは企業が事業のために何らかのコンテンツを用意し、それを伝えたい人にしっかり伝える場を指す。コンテンツは試供品、ブランドメッセージ、新たな利用体験など様々であり、それらが届くことで消費者の生活に影響を与えていく。アマゾンがそう名乗っているわけではないが社会における基盤になった同社は企業から見るとメディアとしての価値を持つ。

 実際アマゾン自身、多くの人が情報をやりとりする場になっている。会員制サービス「アマゾンプライム」があり、会員以外の消費者にも「商品を検索するならアマゾンで」という習慣がある。アマゾンのサイトを訪れる人は新商品やサービスに出会い、関連する商品をたどり、レビューを読み、気に入ったものがあればその場で購入する。本や衣類、家電などの売り場だけでなく電子書籍や音楽、動画を流通させる場もある。さらに「エコー(Echo)」などスマートスピーカーと対話型AI「アレクサ(Alexa)」によって家庭の様々な生活場面に入り込んでいる。

 企業から依頼を受けたアマゾンは人々の利用履歴から特定コンテンツに興味を持つと思われる人を選び出す。アマゾンのサイトは利用者に合わせてお勧め情報など告知を出す場所を多数用意しており、それらを使って利用者をコンテンツに誘導できる。キャンペーンを実施した結果をデータに基づいて分析することも可能だ。アマゾンの利用者は利用履歴をアマゾンが使うことを了承しているし、その内容はあくまでも利用体験の価値に寄与し、個人情報関連の規制にも抵触しない。

アンケートを強要しない

 メディアとみなせる取り組みをアマゾンは複数実施している。例えば試供品の配布である。注文した覚えがない商品がアマゾンから届く。表包みを見るとアマゾンからの試供品だと書いてある。メーカーからの委託を受け、アマゾンがその商品を気に入ると思われる人を選んで送る。試供品を試した消費者はアマゾンからワンクリックで発注できる。また「サンプルショップ」と命名したページをアマゾンは用意している。そこでは美容商品をまとめて買うとサンプル商品が実質無料になるといった販促企画が実施される。

 興味深いのは試供品についてもサンプルショップについても対象者にアンケートへの回答を強いていないことだ。通常ならアンケートをして感想を聞くはずだがそれがない。試してみた商品を購入したかどうか、サンプルショップでサンプルを得た後、どう行動したかをアマゾンは追えるからだ。アンケートに回答した瞬間の反応ではなく行動や意識の変化をみていける。

 同じくメディアと呼べるサービスとして個別の商品ではなくブランドをアピールし保護する仕組みがある。企業はブランドロゴを強調した広告やブランド専用ページを用意すれば消費者の購買行動などに基づいてブランドへの反応を分析できる。米国のアマゾンサイトには「Launch your brand on Amazon」というページがありブランド関連のフルサービスを受けられる。特徴として模倣品追跡の機能があり権利侵害が疑われる類似ブランドや商品、コンテンツをアマゾンが見つけ削除してくれる。