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米アップルがマイノリティー(少数派)事業者支援の第2弾を発表した。選ばれた事業者はいずれも社会問題を解決する具体策を持ち、行動している。少数派ならではの着眼と取り組みを、アップルが大きな動きにしていく。

 「Apple Impact Acceleratorの2番目の起業家たちを歓迎できることを誇りに思う。これらのリーダーたちは創造的な技術と共に『何が実現できるか』についての大胆な楽観をもって気候変動の課題に立ち向かっている」

 米アップルのティム・クックCEO(最高経営責任者)は2022年8月26日、Impact Accelerator(インパクト促進策)についてこうツイートした。マイノリティーが経営し、持続可能性といった社会の問題に取り組む小規模企業を支援するプログラムで、アップルは25日に新たな支援先16社を発表した。2021年8月17日には第1弾として15社を選んでいた。「マイノリティー企業がリーダーシップを発揮し、必要な技術を持つパートナーを巻き込み、気候変動に代表される社会問題を解決していく」、そうした事業を育てる狙いである(2021年9月16日号の本欄参照)。

 問題に着眼し、解決の構想を形にし、現場で実行、継続していく上でマイノリティーであることは強みになる。マジョリティー(多数派)にない視点を持ち、いち早く問題が起きている現場に深く関わっているからだ。

水質データを整備し、健康を守る

 第2弾としてアップルが選んだ16社の事業範囲は幅広い。エンジニアリングやリサイクル、スコアリングといったサービスから、ある部族が持つ土地を使ったグリーンエネルギープロジェクトまで、事業モデルは多様だ。

 一例としてリストの1番目にあるアクアジニュイティ(Aquagenuity)を見よう。水(Aqua)と創意工夫(ingenuity)を組み合わせた社名を掲げる同社の事業はいわば水質のグーグル検索である。住んでいる地域を入力すればその地域の水質がすぐ分かる。AquaScoreと呼ぶ指標を用意し、誰でも共通の理解ができるようにした。

 同社の創意工夫は水質データベースの整備にある。水質の問題は複数の要素が相まった結果として生じる。このため水質の指標を定義し、それを導く源になるデータを継続して集め、しきい値などを設定し、安定した指標を確立するのは容易ではない。NASA(米航空宇宙局)の研究者だった創業者はマイノリティーであり、自身のコミュニティーの水汚染をきっかけに、水質データがないことに気付き、起業した。

 アップルは同社を「一般市民が水質を監視し、日常生活に与える影響を理解できる方法を提供する」「環境問題の根本にあるデータ不足に対処し、有色人種のコミュニティーに対する害を軽減し、命を救い、健康を改善する」とたたえている。

 しかも水質データは住宅地、農地、工場など、あらゆる場所の営みの質に直結する。水質の可視化により、水の問題が天気予報のように身近になると共に、状態の変化を把握できるため、水質改善の度合いや逆に何らかの劣化の兆しが見えてくる。水質データが多方面に大きな変化を起こせることに注目し、米グーグルは同社をサステナビリティーの重要な担い手として以前から紹介し、技術支援をしてきている。

 アクアジニュイティは持続的な社会づくりの最前線にいる。他の15社も同様である。その顔ぶれを見ると、創業から年数を経ている企業、全米あるいはさらに広域を対象にする企業、対象とする事業のリーダーと言える企業が並ぶ。マイノリティー企業という共通点を持つ優れた企業を選び、それらに賛同するアップルが仲間を募り、英知を結集し、より大きく実効性のある動きをつくりだそうとしている。