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立場を問わず、テクノロジーのニーズとシーズの動向を知っておくとよい。利用者の期待は介護や医療、二酸化炭素の削減、移動の自動化に集中する。ある技術とITが融合し、リアルな領域とバーチャルな領域が重なっていく。

 ビジネスパーソン1000人を対象に「今(2022年)、重要性が高い」技術、「2030年において重要性が高い」技術、をそれぞれ聞いたところ、第1位は共に「介護ロボット」だった。回答者には調査の際、介護ロボットについて「AI(人工知能)搭載の人型の利用が始まる」と説明した。介護担当の職員が必要な動きを教えた後、ロボット自身が状況を把握して動くことを想定している。この技術はまだ発展途上だが、介護における人手不足を解決したいという要望は極めて強く、それが調査の結果に出ていると考えられる。

 この調査は日経BP 総合研究所が2022年6月から7月にかけて実施した『5年後の未来に関する調査【有望技術(2022年)編】』である。9月に出版された書籍『日経テクノロジー展望2023 世界を変える100の技術』に記載された100件の技術を対象としている。

 冒頭に示した通り、調査では「重要性」を尋ねているが、「重要性が高い」と答えたビジネスパーソンの割合を本稿や書籍では「期待度」と呼んでいる。

表 2022年と2030年のテクノロジー期待度ランキング(有効回答1000人)
最も期待されているのは「介護ロボット」(出所:日経BP 総合研究所『5年後の未来に関する調査【有望技術(2022年)編】』)
表 2022年と2030年のテクノロジー期待度ランキング(有効回答1000人)
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社会問題の解決に期待

 2022年と2030年の期待度(表には1位から15位までを示した)を比べると、かなり重複がある。両方に共通する傾向として、介護や医療(医療ロボット、MR医療、認知症診断支援ソフト)、二酸化炭素の削減(カーボンリサイクルシステム、ゼロカーボンシティ、グリーン水素、グリーンコンクリート、人工光合成)、移動の自動化(完全自動運転、無人運転MaaS、ドローン配送、給電道路)への期待が高い。MR医療は複合現実(MR)を使い、遠隔地の患者の様子を3次元画像で確認する。

 これらの領域には高齢化・少子化が進む日本が解決しなければならない問題がある。2030年のランキングで15位以内に入った「人工肉」と「次世代原子炉」も広い意味で二酸化炭素を削減する技術とみなせる。

 一方、量子コンピューターやWeb3は社会問題の解決への期待よりも、報道が多いこともあって、今までにない新技術としての可能性に興味を持たれているとみられる。ただしWeb3は2030年の期待度で18位だった。

 書籍『100の技術』に掲載した技術は、日経BPが発行する電機・自動車・ロボット、IT・ニューメディア、建築・土木、医療・健康・バイオテクといった専門分野の技術を追う媒体の編集長と、BPのシンクタンクである総合研究所のラボ所長ら50人が「2030年に向けて世界を変える技術」として選んだものだ。つまり、期待度ランキングはニーズの動向を、100の技術はシーズの動向を、それぞれ示している。

 100件の技術を見渡すと複数の技術が融合したものが多い。ある技術と別の技術が組み合わさることで新たな価値を生んでいく。IT以外の技術にITが融合する例が特に多い。