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新しい働き方の議論がにぎやかだがテレワークだけでは新しくない。様々な制約を突破し、チームで創造的に活動する、それが目指す姿である。GAFAMと呼ばれるIT大手各社が提示する働き方から学ぼう。

 どこにいても、どのような状況でも、どれほど悩ましい制約や障害があろうとも、それらを超え、多様な人が1つのチームとして協業し、楽しく創造的に仕事をこなし、突発事態に直面しても柔軟に対処し、打開していく。

 このような「人ならではの仕事」「チームだからこそできる仕事」をデジタルテクノロジーによって実現していく。これが新しい働き方でありトランスフォーメーションである。GAFAM(米グーグル、米アップル、米フェイスブック、米アマゾン・ドット・コム、米マイクロソフト)と総称される米国のIT大手各社はこうした新しい働き方を目指し技術やツールを開発。自ら使い、顧客に提供している。

全てをデータにして取り込む

 アップルは2020年7月、「Apple at Work(from Home)」というWebページと共に、6分強の動画『The whole working-from-home thing』を公開した。自宅でリモートワーク(テレワーク)を強いられた4人の登場人物が新製品を開発するために奮闘する様子が描かれている。

 ゼロから意見を出し合うところから始まり、オンラインミーティングを開き、情報共有ツールを駆使し、締め切りまでの限られた時間の中でアイデアを形にしていく。チャットやWeb会議はもちろん、リアルな写真や手書きの資料もふんだんに使われ、しかもリアルを超えるコミュニケーションが交わされ、コラボレーションが進む。

 それにはリアルな資料をデジタルの世界にデータとしてすんなり取り込み、共有し、それを使って協調作業をこなさなければならない。例えばマイクロソフトの「Microsoft 365(前Office 365)」の表計算機能「Excel」にはスマートフォンで紙に印刷された表を撮影すると即座にスプレッドシートにデータとして登録してくれる機能がある。ある人が自宅に置いた資料の表を撮影、離れた所にいる別の人がExcelを使って加工する、といった協調作業が可能になる。

 リアルな紙にはさまざまな制約があるが最も困るのは時間と空間を超えた協調作業を複数組織にまたがってするときである。紙の資料をpdfにしてメールし承認し、さらにまたメールすればなんとか仕事を進められるが、複数人でその資料を編集したり書き直したりしようとしたらどうしてもデータに変換しなければならない。

 Microsoft 365においては場所を問わず、チームで協調作業することを前提に各機能が再設計されている。Excelのセルに注釈やコメントを入れるとそのままチャットとしてチームメンバーに飛び、会話できる。図を手書きすれば即座に読み取ってデジタルデータの図ができる。対話をしながら表や図が出来上がっていく。

 プレゼンテーションツールの「PowerPoint」には発表者の言葉をリアルタイムで書き起こし、スライドの字幕として表示するライブキャプション機能がある。音が聞こえにくい人も会議に自然体で参加でき、チャットで会話できる。字幕を自動翻訳すれば言語の壁も越えられる。