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二酸化炭素の排出を実質無くす「カーボンニュートラル」は難題である。目標と活動の全体像を掲げ、技術を駆使し、周囲を巻き込む必要がある。GAFAMと総称される巨大IT企業の活動から学べることは多い。

 2020年10月12日に発行された書籍『新型コロナに立ち向かう100の技術』(日経BP)は新型コロナウイルス感染症とその悪影響に対処する技術を集めており97番目に「DAC(直接大気回収)」を紹介している。化学溶液などを使い、大気中の二酸化炭素を直接捕集する技術で米マイクロソフトなどが取り組んでいる。

 「カーボンニュートラル」あるいは「カーボンネガティブ」は経営課題でありDACはその対策とされている。企業活動を通して二酸化炭素など温暖化ガスの排出と吸収がプラスマイナスゼロになればニュートラル、排出するより多くの二酸化炭素を吸収できればネガティブと呼ぶ。マイクロソフトは2030年までに全事業をカーボンネガティブにすると宣言している。

 新型コロナで打撃を受けた経済を再生する狙いも含まれるが欧州のカーボンニュートラル政策は自動車産業などに大きく影響する。部品メーカーまで含めてカーボン対策を見直すことになるからだ。

目標と全体像掲げ技術で自己革新

 カーボンニュートラル/ネガティブに取り組む先進企業がGAFAM(米グーグル、米アマゾン・ドット・コム、米フェイスブック、米アップル、マイクロソフト)と呼ばれる5社である。その姿勢と活動内容は他の企業にとって参考になる。

 5社とも経営トップ自らがゴールとロードマップを宣言している。アップルは事業全体を2030年までにカーボンニュートラルにする。すでに70社以上のサプライヤーがアップル向け部品の製造に再生可能エネルギー由来の電力だけを使うことに同意している。

 アマゾン・ドット・コムは2019年9月、2040年までに全事業をカーボンニュートラルにする「クライメート・プレッジ(気候誓約)」を発表した。この誓約を国連の気候変動枠組条約(UNFCCC)の前事務局長、クリスティアナ・フィゲレス氏が創設したグローバル・オプティミズムと共に作り、アマゾンが最初に署名した。まず「シップメント・ゼロ」と呼ぶプロジェクトにより2030年までに配送業務の50%をカーボンニュートラルにする。これに先立って2025年までに使用する電力を100%再生可能エネルギー由来にする。アマゾンの場合、消費財を含む商品と配送を含む巨大なサプライチェーンが対象になる。

 各社はゴールに向けた活動の全体像を提示し、進捗を数値で定期的に公表、活動に一貫性を持たせる。共通するのは自ら発言し、目標と全体像を掲げ、技術で業務を変え、他社も巻き込み、世界を変えていく姿勢である。活動としてはハードウエアのリサイクルとデータセンターや製品製造、配送における再生エネルギー利用があり、さらにDACや排出枠購入、森林保護への投資といった対策を組み合わせる。

 技術をもって自ら変わる例としてアップルのiPhoneリサイクルがある。顧客に対して買い取りサービス「Apple Trade In」を提供するとともに、iPhoneを分解するロボットを自社開発した。アップルとリサイクルのパートナーは資源回収率の最大化、プライバシー保護、環境や健康、安全の基準順守に配慮する。アップルは製品に使われている資源をすべてリサイクルし、資源を発掘しなくても製造を続けられるようにする「クローズド・ループ」をゴールとする。

 アップル以外の4社も同様の活動を進める。グーグルは2022年から全製品にリサイクル素材を使用する。フェイスブックはシンガポールを拠点とする太陽光発電事業者のサンシープ・グループと組み、データセンター用の電力を調達すると2020年10月、発表した。アマゾンは気候誓約の実現を後押しする20億ドルのファンドを用意した。また、開けやすくリサイクルが可能な梱包材を開発。取引先に対し採用を要請してきた。

 アマゾンはカーボン対策の手法を開発する専任の技術者や科学者を雇用し、3年をかけて排出量を測定するモデルやツール、指標を開発した。マイクロソフトは2020年10月、クラウドサービスのカーボン排出量を計算するツールを発表、他の企業が使えるようにした。アップルは2020年に入り、製品分解ロボットなどの技術を外部に提供する方針を打ち出した。