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翌年以降の活動に向けて構想を練り計画を立てる時期が来ている。意味ある取り組みをするには物事の関係を大きくとらえて考える必要がある。構想や計画を深めるための「6つの視点」を紹介する。

 12月という、経営者はもちろん事業部門の責任者も情報システム部門長も来年以降どうしていくかを考える時期になった。現場の担当者も業務をこなしつつ翌年どのように仕事や勉強に取り組むかを考えたりするはずだ。

 200回を超えた本連載では視野を広げ、視座を高めて考えることが重要だと強調してきた。何らかの問題があるとしてそこには顧客や関係者の意向、仕事の進め方、組織の慣習、既存の情報システムなどが複雑に関係し合っている。全体像を把握してから対策を考える必要があり、眼前の問題だけに取り組んでもなかなか解決できない。

 全体像やグランドデザインあるいはモデル、アーキテクチャーといった言葉を本連載でしばしば使ってきた。文でなら数行で書けるが実際に物事を大きくとらえ、考えていくのは難しい。どうしても抱えている問題や与えられた目標について考えてしまいがちだ。

 全体をとらえるには思考のフレームワークが有用である。SWOT、3C、4P、PEST(EL)、ELSIなどたくさんある。岩波英和辞典を引いてみるとframeworkの訳語として骨組み、枠組み、構成などと出ていた。動詞であるframeは組み立てることを意味し、「(思想・行動・能力などをある目的に)適合させる」「考案する、もくろむ、(計画・規則・理論などを)たてる」という訳語もあった。

 目的に対し「こうしよう」と「考案」し「もくろむ」ときに考えを整理するための目次にあたるものがフレームワークである。構想を練る当人が考え抜く(frame)ことが大事であり、目次通りに枠の中を機械的に埋めていくだけでは「思想・行動・能力」を「適合」するものは出てこない。フレームワークは役に立たないと思っている人は多いがおそらく使い方を間違えている。

物事の関係を見直す

 以下ではビジネスコンサルティングを手掛けるインターブリッジグループ(ibg)がまとめつつあるフレームワークの案を借り、情報システム部門の責任者や担当者が様々な視点から物事を考える例を示してみる。

 ibgのフレームワークは物事の関係をとらえる「公と個」「文化と文明」「自然と人間」という3つの視点と、関係を見直したり深めたりするための「学び」「交わり」「やり取り」という3つの視点で構成される(視点の内容や名称は変わる可能性がある)。複雑な関係を把握し、見落としていたあるいはゆがんだ関係に気付き、問題の解決に向けて関係を正すことを狙ったものである。

公と個:公とは社会や組織など何らかの集団であり、個はそこに所属あるいは関わる1人ひとりを指す。公と個の間には様々な関係があり得るが理想は公が掲げる目的に賛同する個が集まり、それぞれの個は自立・自律して活動することだろう。目的が曖昧で個が公(組織)に依存していると何事もうまくいかない。情報システムの開発や運用にあたっては公(組織)の目的に合わせつつ個(利用者、顧客)の使いやすさに気を配ることになる。公を社会ととらえると個人情報の適正な利用といった倫理面の検討も求められる。

文化と文明:文化とは人の生き方や働き方、それらの積み重ねから出てきた考え方や習慣を指す。文明は生活や仕事を便利にする技術やその応用の積み重ねである。前者を精神的、後者を物質的と呼んでもよい。ITや情報システムは文明に入るが、それらを使いこなすには文化の充実が欠かせない。組織の仕事の進め方や社風によって情報システムの利用は大きく異なってくる。テレワークやVR(仮想現実)を介した活動が人間の精神にどう影響するのかについても考えないといけない。

自然と人間:自然を1人の人間が、あるいは人類がどうとらえ、自分たち人間と自然との間にどのような関係を築くのか、再考する時期が来ている。典型が環境問題であり情報システムは有害物質を出して周囲を汚染することはないものの電力を大量消費するため二酸化炭素の排出問題には直面する。