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1975年、日本に初めて情報システムに関する方法論が持ち込まれた。一貫した思想に基づき、方法を位置付けたものが方法論である。その後、方法は多数導入されたが方法論が定着したとは言えない。

 50年前、日本で電子計算機の導入が活発になってきた時に先達が得た知恵には普遍性がある。当時から活動してきたシステムコンサルタントの松平和也氏が2019年11月18日に情報システム学会の「システム開発方法論への科学的アプローチ」研究会で行った講演から「今でも役立つ原則」を紹介する。

「何かが足りない」と考えて渡米

 前号で主に進行管理の原則を4点説明した。「1.目的と手段をはっきり分ける」「2.考え抜いて計画し書き直さない」「3.計画を張り出し全員が常に見る」「4.利用者の慣れを考えて移行する」である。今回は主に設計に関する4点を挙げる。

 松平氏は上司のコンサルタント、吉原賢治氏と共に電子計算機導入に関する方法を追求し、精緻にすることで成果を出したが「何かが足りない」と考えるようになった。調査のために米国へ行き、出会ったのがコンサルタントのミルト・ブライス氏だった。ブライス氏はPRIDEという情報システム方法論を創った人で、松平氏はそれを日本に持ち帰り、1975年から教育サービスを付けて販売を始めた。これが情報システム方法論の初上陸である。

5.情報は人が、データは計算機が扱う

 PRIDEは「PRofitable Information by DEsign - through phased planning and control」を縮めたもの。経営や事業に価値をもたらす情報を計画と統制に基づいて設計する。電子計算機やシステムという単語が全く出てこない点が重要である。

 ブライス氏は数々の法則を遺した。松平氏は「Information = Data + Processing」という法則に感銘を受けた。情報はデータを処理して作られる。EDPS(エレクトロニック・データ・プロセシング・システム)を使う場合もあれば手作業でデータを処理することもある。どちらにしてもデータから情報が作られる、まさにそのタイミングで情報を活用して経営に役立てたい人間がいてこそ成り立つ話である。情報を扱えるのは人間だけでEDPSには処理できない。

6.情報が設計を誘導する

 したがってどのような情報が企業や事業に価値をもたらすのか、そこから考えることになる。PRIDEではこれを「情報誘導型設計(インフォメーション・ドリブン・デザイン)」と呼ぶ。システムコンサルタントの仕事は経営者や事業部門長あるいは現場責任者から話を聞き、価値をもたらす情報は何かを見つけ出すこと。欲しい情報をはっきり言える企業もあれば、やりたいことはあっても情報のことまでは考えていない企業もある。

 続いてその情報を必要な時期に合わせてどう届けるか、そのための仕組み(データとプロセス)を考える。SE(システムズエンジニア)の仕事も本来そこにあった。

 松平氏は当時、カレーライスに例えて説明した。カレー(情報)を食べる(使う)のは人である。おいしいカレー(情報)を出すには新鮮な素材(データ)を取りそろえ、食べたいときに料理(プロセス)する。コンサルタントの仕事は「利用者が求める帳票や画面をそのまま用意することではない」(松平氏)。再び、SEの仕事も同じである。現在、ITの仕事をしているコンサルタントやSEはうまいカレーを顧客に食べさせているだろうか。