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新しい何かを生み出すことが今、求められている。創造力が問われるが、自分でどうにかできるものなのか。まずアート(芸術)に接するところから始めてみよう。

 「新しいことをせよ」「従来通りではなく新たなやり方で取り組んでほしい」。企業の経営者の多くがこう語り、現場に期待する。新規ビジネスの開発が任務の人はもちろん、既存ビジネスの担当者に対しても「新しく」という要請が上から来る。

 実態があるかどうかはさておき「ABCD(人工知能、ビッグデータ、カスタマーエクスペリエンス、デジタルトランスフォーメーション)」はいずれも新しい何かに取り組むことである。そこで考え方や取り組む姿勢も新しくしよう、という話になり、デザイン思考やアート思考が出てくる。

 デザインは「設計」だからビジネスや情報システムに関連があるが、アートは「芸術」であり少し考えてしまう。芸術を広辞苑で引くと最初に「技芸と学術」とあり次に「art」の訳語として「特種の材料・技巧・様式などによる美の創作・表現」とある。製品や操作画面を美しくすれば新しく見えるだろうが、それはアートなのか。

「ひらめきの種」がアートにはある

 アートとビジネスやテクノロジーとの関係を考えようと『芥川賞作家、上田岳弘のテック&アート対談』という連載を日経 xTECHで始めた。早朝小説を書き日中はIT企業で働く上田氏がテクノロジーやアートの担い手と対談する。上田氏の問題意識は次の通り。

 「何か新しい製品やサービスを生み出そうとしたとき、理屈や従来の専門性だけではうまくいかなくなってきた。複数の専門性を持とうとか、アートやデザインに配慮しようとか、そういうことがいわれている。ただ、どうもアートが香水とかスパイスみたいに扱われている場合が多い。今までのやり方でやって最後にちょっと振りかけるみたいな。それはアートでも何でもない」(対談の第1回から)。

 つまり「製品や操作画面を美しくすれば新しく見える」が、それだけでアートとは言えない。ではアートはどのようにビジネスやテクノロジーに関わるのか。上田氏と相談し、連載の趣旨文を次のようにした。

 「テクノロジーがまずあって、そこからビジネスが発生する。アートはビジネスとはまったく関係ないように思われがちだが、社会のこれからを知ろうとするとき、その胎動は既にアートの世界で見られることがある。複雑なものを複雑なまま表現される芸術作品には多くのひらめきの種が含まれているからだ。そのことを経験的に知っているからこそ、最先端のビジネスパーソンは芸術をおろそかにしない。テクノロジーとともにアートも『人の営為の集積』であるビジネスの礎になる」

 「最先端」は「前向き」と読み替えていただければと思う。起業家や新規事業担当者だけを指すわけではない。

 アートの中には「多くのひらめきの種が含まれている」からアートに接した人の頭の中に「将来のこれから」がひらめき、新しい何かを生み出すことがある。ただし「胎動」が見られるといっても「複雑なものを複雑なまま表現される」ので「社会のこれから」が明示されるわけではない。

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