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融資利率の引き下げ、飲食店の優先サービス、好相性の結婚相手探し――。「人徳」があれば優遇などを受けられる、お得な仕組みが登場しつつある。LINE、ヤフー、NTTドコモ、ITベンチャーなどの最新動向を追った。

ヤフー、LINE
デジタル信用基盤構築へ

 メッセージングアプリの国内MAU(月間利用者数)8300万人のLINEと、月間ログインユーザーID数5000万のヤフーを傘下に持つZホールディングス。日本を代表する2大ネット企業がいま力を入れているのが、信用スコアとそれを生かしたサービスの開発だ。両社はともに2019年6月、信用スコア事業を始めると発表した。

LINEの出沢剛社長(写真:村田 和聡)
LINEの出沢剛社長(写真:村田 和聡)
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Zホールディングスの川辺健太郎社長(写真:村田 和聡)
Zホールディングスの川辺健太郎社長(写真:村田 和聡)
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表 LINEとヤフーのスコアリングサービスの概要
多様なデータを活用する
表 LINEとヤフーのスコアリングサービスの概要
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 「日常をちょっと豊かに」「お客様にお得で便利な体験を提供するサービスを」。控えめなうたい文句とは裏腹に、そのインパクトは大きい。LINEとヤフーは信用スコアをそれぞれ自社の事業で使うだけでなく、外部の提携企業に提供する計画だ。

 ただし、2020年2月初めの時点で両社は信用スコアを使ったサービスを本格的に始めていない。LINEが自社の金融系サービスの一部に使っている以外は、利用者のスコアを算出するのみにとどまっている。

 2020年10月をメドとする両社の経営統合が実現すれば、利用者数は単純合算で延べ1億5000万人規模に増える。信用スコア事業を統合するかは未定だが、スコア算出源である利用者の規模が大きくなれば精度が上がり、影響度もいや応なく増す。結果として同分野の業界標準、いわゆるプラットフォーマーになり得る。

シェア経済やサブスクに活用

 信用スコアによって両社が目指すのが、利用者1人ひとりに合った情報やサービスを提供するパーソナライズだ。「利用者を塊で捉えるのではなく8000万通りを超える個性や人生があると考えて、きめ細かいサービス体験を作る」(LINEの出沢剛社長)。

 両社ともに、自社のネットサービスの利用状況のデータを基にスコアを算出する。例えばLINEは利用者の同意を得たうえでLINEアプリの利用・行動データを分析し、「一定のロジックで抽象化した傾向値」(出沢社長)などを基に信用スコアを上下させる。利用開始時にそれまでの行動傾向データを基に初期スコアを算出。利用者が15個の質問に答えるとスコアを再算出する。以降はLINEアプリの使い方に応じて、100~1000点の間でスコアを自動的に上下させる。利用者同士がやり取りしたメッセージの中身やECで購入した商品の内容といったプライバシーに強く関わるデータは使わない。

 活用を想定するサービス分野は融資や証券などの金融関連、C to C(消費者間取引)のECやモノの貸し借りといったシェアリングエコノミー、家電や自動車を継続課金型で提供するサブスクリプション、飲食店やホテルの予約などだ。特にフリマやカーシェアといったC to Cサービスと信用スコアは相性が良いと見る。互いに見知らぬ消費者同士でも、取引相手としての確からしさを推し量れるからだ。

 例えば通常なら何度か利用しないと借りられない上位クラスの自動車を、スコアが高い利用者が借りられるようにする。C to Cの多くはサービス利用者が互いに相手を評価する「ピアレビュー」を導入しているが、初めて利用する場合やレビューが少ない場合は役に立たない、信頼性を担保できない、という問題点があった。