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採用時の「不条理」防止に腐心

 リクルートキャリアの競合であるマイナビも、学生が企業に提出したエントリーシートの情報を自動解析してスコアを算出するサービス「PRaiO(プライオ)」を提供している。スコア算出に使うのはエントリーシートの自由記述欄や学歴欄から抽出したデータ(特徴量)のほか、適性テストの結果など数百項目におよぶ。前年に就職が決まった学生のデータを教師データとし、採用の可否において重視していると推測される特徴量を抽出する。志望動機など自由記述欄については、文章量や登場する単語の種類、単語と当該企業の業務との関連性、記述の論理性などを自動で分析しスコア算出に生かす。

 リクナビと異なりマイナビは就職サイトにおける学生の行動履歴など自社が集めたデータについてはスコア算出に使っていない。「就職活動のプラットフォームを学生と企業に提供する企業として、ここは外せない考え方だ」と企画推進統括部の松井徹哉企画開発部長は語る。導入した後は顧客企業が分析ソフトウエアを運用する方式のため、個人情報保護法上の問題は生じない。

 マイナビは学生にとって不条理な判定を防ぐため、技術と運用の両面で工夫している。まずエントリーシートの情報のうち、名前や住所、顔写真などはスコア算出に使わない。加えて「スコア算出のAIモデルがブラックボックスにならないよう、重視している特徴量を顧客企業に説明している」(松井部長)。さらにPRaiOのスコアだけで合否を判定しないよう規約に定め、顧客企業に伝えている。

図 就職/採用活動に伴うAI格付けの利点と欠点
図 就職/採用活動に伴うAI格付けの利点と欠点
就活におけるAI格付けの功罪
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「裏垢」特定、求職者の素顔に迫る

 SNSの裏アカウントへの書き込みから、求職者の素顔を浮かび上がらせる――そんなサービスも現れた。Web風評監視を手掛けるソルナが提供する「ネットの履歴書」だ。「SNS時代の人物健全度調査サービス」をうたう。

 SNSの投稿などインターネット上に公開された求職者のデータを自動収集し、過去の報道記事やブログ記事などと合わせて犯罪やトラブルの履歴を抽出。「攻撃性」「自己顕示欲」などの項目ごとに人物の健全度を算出する。「バイトテロを起こした人物は、過去にも何らかのトラブルを起こしていた場合が多い」と三沢和則社長は語る。スコアと共に算出の根拠となった投稿も求人企業に提示する。

 求職者が主に使うSNSアカウントのほか、匿名で運用する裏アカウント、いわゆる「裏垢」についても海外の専用ツールを使い特定する。元千葉県警のサイバー犯罪担当者を採用し、犯罪者の裏アカウントを特定するノウハウも合わせて活用している。

 求人企業にとっては従来の履歴書や面接では見抜くのが難しい求職者のリスクを把握して、ふさわしくないと判断した人物を採用せずに済む利点がある。半面、求職者にとっては過去の問題行動などを理由に入社を拒否されるのは不条理だと感じるかもしれない。

 加えてネット上のデータを自動収集する過程で、同姓同名の人物を取り違える恐れもある。名前も生年月日も同じというケースはあり、もし人違いがあれば求職者にとっては深刻な権利侵害になり得る。

 ソルナの三沢社長は「SNSに投稿された顔写真、部活や所属組織などの経歴情報などを使い、同一人物かどうかを慎重に判断している」と説明する。さらに顧問弁護士の助言のもと、オープンデータの調査について求職者の同意を取るよう顧客企業に勧めている。