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最新テクノロジーを活用した防災・減災の取り組みが広がる一方で、課題もある。平時には使わず眠らせたままのシステムでは、いざというときに機能しない恐れがある。市民や民間企業が普段から活用するシステムに、防災の仕組みを埋め込む必要がある。

 現在、災害への対応を目的に様々な政府機関や自治体がドローンの導入を進めている。ドローン関連のスタートアップであるセンシンロボティクスは、先に取り上げた愛媛県以外にも、消防庁や三重県、仙台市などにおけるドローン導入を支援してきた。そんな同社の北村卓也社長は、日本における「防災ドローン」の課題も指摘する。「ドローンは日常的に使っていないと、いざ災害が発生した時には機能しない恐れがある。バッテリーが劣化していたり、機体に不良が発生していたりすることがあるからだ」(北村社長)。

 どれだけ優れた災害対応テクノロジーであっても、災害が発生した時に使えないのでは意味がない。ドローンであれば、操縦したり運航を管理したりできる人材の育成が必要だし、機体は普段からメンテナンスしておく必要がある。ドローン自体は高価でなくとも、運用を含めるとかなりの費用が発生する。自治体にとって費用の捻出は容易ではないため「実証実験止まりとなる自治体も多い」(同)という。

日常業務でのドローン活用が不可欠

 理想的なのは、電力網や鉄道網、道路などインフラの設備点検を担う民間企業が日常の点検業務に利用できるドローンのネットワークを構築し、災害時にはそれを行政が活用できるようにしておくことだ。「災害発生時に行うインフラの被災状況確認のオペレーションは、日常の点検業務と内容は同じ。ドローンで設備点検の効率を改善する取り組みが、そのまま災害対策にもなる」。北村社長はそんな構想を描く。

 このような未来の実現に向けてセンシンロボティクスが開発しているのが“ドローン基地”である「SENSYN DRONE HUB」だ。設備点検などでドローンを使用する際には扉が開き、ドローンが自動で離着陸する。基地には雨量や風速、気温を測るセンサーが搭載してあり、飛行できる環境か否かの判断も自動的に下す。基地は通信設備もあり、点検を終えたドローンが自動で着陸すると、ドローンの充電が自動で始まるとともに、撮影したデータを自動でクラウドに転送する。

センシンロボティクスが開発する「ドローン基地」(写真提供:センシンロボティクス)
センシンロボティクスが開発する「ドローン基地」(写真提供:センシンロボティクス)
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 ドローン基地が目指すのは、ドローン運用の完全自動化だ。これによって誰もがドローンを日常的に活用できるようになるだけではない。「東日本大震災を体験した自治体職員の方が『大地震の発生から30分間は、自分の身を守るので精いっぱいだった』と振り返っていた。ドローン基地があれば、その30分の間に勝手にドローンが飛んでいって、必要なデータを集めてくれる」(北村社長)という狙いもある。通常時と災害発生時の両方を踏まえた対策でもあるのだ。