製造や建設、流通を中心に、デジタルツインの導入が国内で相次いでいる。現実空間のデータを高精度・高頻度に取得し、仮想空間で未来を予測する。DX(デジタル変革)の新たな潮流の1つになっている。
現実世界に存在する建物や設備、製品、人などを仮想空間にそっくり再現するデジタルツイン。その構築に取り組む日本企業が相次ぎ登場している。
特に導入企業が多いのは製造業だ。ダイキン工業はデジタルツインの機能を備えた新生産管理システムを2020年から本格活用している。製造設備に取り付けたセンサーやカメラからのデータを基に設備の異常やラインの停滞などを予測して2次元マップに表示。迅速な対応に生かしている。旭化成は、水素製造プラントの内部を丸ごと仮想空間に再現し、製造設備に取り付けたセンサーやカメラからのデータを基に、設備異常の状態を遠隔地のベテラン技術者と共有し、対応の迅速化を目指す。
製造業だけではない。建設や流通など幅広い業種で導入が進んでいる。
建設業では竹中工務店が2021年11月、デジタルツインの機能を備えた「建設デジタルプラットフォーム」の運用を開始。建設予定のビルのデジタルツインをBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)のデータによって作成し、3種類ある設計の整合検証に生かしている。鹿島は2021年、ビルのBIMデータや災害時の人の動き、煙に関する時系列データを基に、避難シミュレーションのデジタルツインを構築。VR(仮想現実)を併せて活用することで、ビルごとの構造に基づいたリアルな避難訓練を実現した。
流通業の三越伊勢丹は2021年3月から、伊勢丹新宿店と周辺地域を「REV WORLDS」と呼ぶ仮想空間に再現。顧客1人ひとりがアバターを操作して仮想空間を移動しながらEC(電子商取引)サイトに飛んで商品を購入できるデジタルツインのサービスを提供している。医療ではコニカミノルタが手術の演習用に、患者の椎骨を仮想空間に再現するデジタルツインを開発した。
ガートナー ジャパンのアナリストでデジタルツインに詳しい、池田武史リサーチ&アドバイザリ部門バイスプレジデントは、「デジタルツインは日本企業の間でも期待が高まっている。今後3~4年をかけて期待のピークを迎えるだろう」とみている。