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竹中工務店はビルに関する複数のデジタルツインを構築・運用している。設計検証やビル運用といった用途で使い分け、コスト削減などに生かす。日本瓦斯はガスボンベの管理に適用し、物流コストを削減した。

竹中工務店
3種の設計を重ねて表示 工事前に不整合見つける

 竹中工務店はさまざまな建設業務の生産性を向上すべく、ビルの営業から設計、生産準備、施工、維持保全までのプロセス全体をカバーするように複数のデジタルツインを構築し活用する取り組みを進めている。

 デジタルツインの機能を持つ主なシステムとしては、2021年11月に運用を始めたデータ活用基盤の「建設デジタルプラットフォーム」や2014年10月に構築したビル運用のシステムである「ビルコミュニケーションシステム(ビルコミ)」などがある。

図 竹中工務店が構築した「建設デジタルプラットフォーム」のデジタルツイン機能
図 竹中工務店が構築した「建設デジタルプラットフォーム」のデジタルツイン機能
仮想空間でビルの設計検証
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 建設デジタルプラットフォームの成果はこれからだが、ビルコミについては「消費電力を照明設備で約26%、空調設備で約14%削減した実績がある」(竹中工務店の政井竜太情報エンジニアリング本部長)という。

建設業の人材不足に対応

 竹中工務店がデジタルツインで生産性向上を図る背景には、厳しいビジネス環境がある。

 「建設業の生産性はこの20年にわたり、横ばいが続いている。生産性や魅力を高め、今後見込まれている技能労働者の不足に対応できなければ、業界自体が立ち行かなくなる」。竹中工務店の金沢英紀グループICT推進室ICT企画グループ長は建設業の現状と課題をこう語る。

 建設業界は人材不足に対応するための働き方改革が待ったなしの状況だ。一般社団法人日本建設業連合会は2015年に発表した「再生と進化に向けて 建設業の長期ビジョン」の中で、2014年度は国内で343万人が建設業に携わっていたのに対し、2025年度には216万人に減ると推計している。

 加えて、2019年4月に施行された改正労働基準法が、猶予期間を経て2024年4月に建設業にも適用される。年次有給休暇の取得が義務化されたり、残業時間の罰則付き上限規制が設けられたりするため、人材不足はさらに厳しくなる。

 竹中工務店にとってデジタルツインの機能を持つシステムは、生産性を高める重要なツールとなっている。