IT業界の「悪癖」がまた顔を見せた。ネットワンシステムズや東芝子会社など少なくとも9社が関与した循環取引が発覚した。各社の売り上げの水増し額は合計で1000億円を超えた。
「このたびは納品実態のない取引に関し、株主や投資家をはじめ多くのステークホルダーの皆様にご迷惑とご心配をおかけし、大変申し訳ない。このような事態に至り、深くおわび申し上げる」――。ネットワンシステムズの荒井透社長は2020年2月13日、アナリスト説明会でこう謝罪した。
事の発端はネットワンが2019年12月13日に開示したニュースリリースにあった。タイトルは「特別調査委員会設置に関するお知らせ」。東京国税局から税務調査の過程で納品の事実が確認できない取引があるとの指摘を受け、外部の弁護士や公認会計士で構成する特別調査委員会を設置するという内容だった。
実は同じ日に日鉄ソリューションズも同様のニュースリリースを開示していた。しかし両社の発表はほとんど話題にならず、これらを結び付けて捉える見方も皆無だった。
様相が一変したのは、年が明けてしばらくした2020年1月18日。東芝が子会社の東芝ITサービスで、実在性を確認できない取引が複数年にわたって行われていたと発表したのだ。架空取引は2019年4~9月期だけで200億円規模が見込まれ、2019年3月期の同社売上高の半分ほどに達する金額だった。
東芝で再び、不正会計か――。東芝は「東芝ITサービスの主体的な関与を認定する証拠はこれまでのところ検出されていない」と説明した。ただ、世間やメディアは過去に不正会計で経営危機に陥った東芝がまたしても架空取引を差配した構図を思い描いた。