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接触確認アプリ、本当に使う?~公益のための個人データ活用とは 6/8 18時

 多くの企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進している。この取り組みを加速させるのに役立つクラウド技術が3つある。「データレイク」「コンテナ」「マルチクラウド」だ。

 データレイクは様々なデータをためるデータ基盤だ。WebサイトのログやIoT(インターネット・オブ・シングズ)のセンサーデータなどを蓄積する。

 従来のデータ基盤であるデータウエアハウス(DWH)は確実に使うデータに絞って保管する。これに対してデータレイクは対象を「使う可能性がある」データに広げる。多様なデータは新しい事業を作る際にアイデアの源泉になる。AI(人工知能)の開発にも使える。

 例えば眼鏡大手のジンズは新規事業でセンサー付き眼鏡を開発し販売している。付帯サービスとして、デスクワーク時の集中力を測定するアプリなどを提供する。そのアプリはデータレイクにためたデータを活用して作った。

 新事業を支えるアプリケーションは日々更新する必要がある。コンテナはその際に役立つ。コンテナにはアプリケーションとOSを合わせて入れる。コンテナの実行環境さえあれば、クラウド上の開発・テスト・本番環境に加え開発者の手元のパソコンでも動作する。実行環境のOSを設定変更する必要が無いので、コンテナを移行させやすい。この特性は更新頻度を高めるのに役立つ。コンテナは前田建設工業や中古車大手のIDOMが導入している。

 マルチクラウドは複数のクラウドからAIやデータベースといった分野ごとにサービスを選んで組み合わせたITインフラだ。クラウド事業者各社のサービスには一長一短がある。マルチクラウドの技術を使うとクラウドのサービスの選択肢を広げられる。企業は自社のDXに適したITインフラを構築しやすくなる。ファッション通販大手のZOZOやNTTドコモがマルチクラウドを運用している。

 データレイク、コンテナ、マルチクラウドの3技術を使いこなす企業の取り組みを見ていこう。

データレイク
大量ログからアイデア

 「新規事業を進めていくうえでどんなデータが必要になるか分からない。だから全てのログをデータレイクに蓄積している」

 こう話すのはジンズの菰田泰生MEME事業部統括リーダーだ。菰田統括リーダーらのMEME事業部はIoTを応用したセンサー付き眼鏡「JINS MEME」を開発している。この事業部でデータレイクを運用している。

 データレイクに蓄積するのはJINS MEMEで生成されるログデータだ。JINS MEMEは加速度センサーや眼球の動きを捉える眼電位センサーなどによって、黒目の動きやまばたき、頭部の傾き・揺れなどを測定し、専用スマホアプリにBluetoothで転送する。ジンズはこのデータを吸い上げ、米アマゾン・ウェブ・サービスの「Amazon Web Services(AWS)」上のデータレイクにためる。ジンズはオブジェクトストレージの「Amazon S3」を使い2017年にデータレイクを構築した。

 ためたログデータは1テラバイト近くに達する。蓄積し始めた当時、具体的な用途や新サービスのアイデアがあったわけではなかった。「ログデータの分析で新しいアプリのアイデアが湧くと考えた」(菰田統括リーダー)。

 データ分析のため、S3にビッグデータ処理サービスの「Amazon EMR」を接続している。EMRはオープンソースのデータ分析ツール「Apache Spark」の機能を備えており、指定したデータをその都度読み込んで高速に処理する。いわゆる「アドホック分析」だ。EMRに常にデータを持たないこともあり、「データウエアハウスに比べて1桁以下の少ないコストで利用できる」(菰田統括リーダー)。

 菰田統括リーダーらはデータレイクのログデータを分析して、JINS MEMEの新しい活用方法を考え、用途別のスマートフォンアプリを拡充してきた。

 2018年以降、2つのアプリを開発しリリースした。アスリートやランニング愛好者向けに走行フォームの改善点をアドバイスする「JINS MEME RUN NEXT」、デスクワーク時の集中力を測定する「JINS MEME OFFICE」である。このほか、自動車運転手の覚醒度や眠気の変化を検知する「JINS MEME DRIVE」など既存アプリの改良にもログデータを役立てている。

 「新しいアプリや機能はデータを基に作り出している。データレイクは試行錯誤を繰り返すDXに不可欠な基盤だ」と菰田統括リーダーは強調する。

図 ジンズのデータレイク活用例
図 ジンズのデータレイク活用例
膨大なログデータをためアプリ開発に生かす(写真提供:ジンズ)
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 ベネッセホールディングスもデータレイクを構築し運用する。タブレットを使った通信教育事業で2020年度にもデータレイクを構築する計画だ。学習者によるタブレットの操作ログやアプリケーションサーバーのログなどを蓄積する。基盤に米マイクロソフトのクラウド「Microsoft Azure」のデータレイクサービス「Azure Data Lake Storage Gen2」を採用する計画だ。