業績不振や人員削減が内憂なら、外患は日米欧が進める規制強化の動きだ。利用者のプライバシー保護にかかわるデータ活用からアプリストア、決済まで。ビッグテックの支配力の源泉にメスを入れる動きが、世界で加速している。
「モバイルOS市場、アプリ流通サービス市場において、米アップルと米グーグルが提供するモバイルOSやアプリストアに十分な競争圧力が働いていない」。2023年2月9日、日本の公正取引委員会はグーグルとアップルが寡占するスマートフォンOS市場の問題点を指摘し、両社に是正を求めた。
公取委が問題視したのは、スマートフォン向けのアプリやデジタルコンテンツの流通ルートにアクセスするための「アプリストア」の仕組みだ。アップルが運営する「App Store」とグーグルの「Google Play」について、自社優遇を通じた競争者排除の懸念があると指摘。スマホの機能へのアクセス制限や手数料の徴収、アプリを通じて得たデータの利用などを論点に挙げた。
アプリの開発者から徴収する手数料率についての懸念も示した。手数料が高額であると同時に料率を一方的に設定しているのは、独占禁止法が禁じる「優越的地位の乱用」に当たる恐れがあるという。アップルとグーグルはそれぞれ、アプリ開発者から売り上げの最大30%を手数料として徴収している。「アップル税」とも揶揄(やゆ)される手数料は、以前から開発者にとって不満の種だった。
是正措置として両社に求めたのが、自社を優遇する行為の防止だ。具体的にはスマホOSの機能やアップデート情報へのアクセスについて自社と競合に差を付けない、アプリ内課金のために自社以外の決済システムも使えるようにする、消費者がアプリを合理的に選べるようにするための選択画面の表示などだ。
「独占禁止法上問題となる具体的な案件に接した場合には、厳正・的確に対処する」。公取委はこう強調した。今後は欧米の規制当局や政府の関係機関と連携し、法整備も含めた競争環境づくりを継続する。
GAFAMをはじめとするビッグテックへの規制を強化する動きが世界で加速している。日本の「公取委ショック」はその象徴だ。日米欧が歩調を合わせたかのように、GAFAMへの包囲網が狭まっている。