東証のシステム障害を検証する調査委員会を率い、報告書をまとめた久保利英明弁護士。障害原因は東証のシステム構築力の弱さと、証券会社に対する東証の立場の弱さだと分析する。原発事故があった10年前と変わらず、「起こってから初めて考える」のが日本の弱点だと喝破する。
(聞き手=浅川 直輝、外薗 祐理子)
東京証券取引所のシステム障害後、独立社外取締役による調査委員会を立ち上げ、2020年11月30日に調査報告書を公表しました。
システム障害の翌日、2020年10月2日に開催された日本取引所グループ(JPX)のリスクポリシー委員会で、委員長の私が調査委員会立ち上げを提案しました。リスクポリシー委員会から幸田真音さん(作家)と米田壮さん(元警察庁長官)に入ってもらいました。
加えて、JPXの独立社外取締役でもある遠藤信博さん(NEC会長)にも入ってもらいました。ITベンダーである富士通の問題を取り上げる以上、IT産業に精通した人を入れるべきだと考えたからです。
遠藤さんはもしかしたら若干ためらったかもしれません。しかしIT産業と証券取引所とは密接な関係があり、検証に当たってIT産業の知見は欠かせません。証券取引所はITの装置産業と言っても過言ではないからです。