全6246文字
PR
図 「DXを推進していますか」に対する回答結果
図 「DXを推進していますか」に対する回答結果
「積極的に推進している」が3割(出所:日経クロステック/日経BP 総合研究所 イノベーションICTラボ『DXサーベイ 2023-2025 674社の成功・失敗の実態と課題分析』)
[画像のクリックで拡大表示]

 日本企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)は成功しているのか、失敗しているのか――。日経クロステックと日経BP 総合研究所 イノベーションICTラボによる独自調査報告書『DXサーベイ 2023-2025 674社の成功・失敗の実態と課題分析』からは、DXの取り組みに進展は見られるものの、十分な成果を上げているとはいえない実態が浮き彫りになった。

 日本企業のDXに対する独自調査は、2019年と2020年に続き、今回(2022年実施)で3回目となる。

デジタル化実態調査2022年版(DXサーベイ2022年版)の概要

 日経クロステックと日経BP 総合研究所 イノベーションICTラボは2022年5~7月に、デジタルトランスフォーメーション(DX)の実態を明らかにするため、独自調査「デジタル化実態調査2022年版(以下、DXサーベイ2022年版)」を実施した。デジタル化実態調査は今回が3回目である。本調査は大きく、(1)アフターコロナ時代を見据えた企業の経営課題とDXへの取り組み状況、(2)6領域28項目のDX推進指標を基に、企業のDX推進度を「レベル5(最も進んでいる)」~「レベル1(最も遅れている)」の5段階でスコアリングする調査、(3)ユーザー企業がDXを推進する際のパートナーとなるITベンダーおよびコンサルティング会社の主要18社に対する顧客満足度調査(実際に委託したユーザー企業による満足度)、(4)同18社に対する期待度調査(ユーザー企業が今後委託してみたいと考える18社への期待度)の4つからなる。

 DXサーベイの調査対象は、全国の証券取引所に上場している企業と年間売上高200億円以上の未上場企業9781社、および日経クロステックと日経BP 総合研究所 イノベーションICTラボが運営する会員組織「ITイノベーターズ」のエグゼクティブメンバー(幹事会員)92社の計9873社。情報システムを統括する役員(CIO)や実務責任者、またはそれに準じる立場の方に回答を依頼した。有効回答数は674社。詳細な調査結果は、『DXサーベイ2023-2025 674社の成功・失敗の実態と課題分析』(日経BP)に掲載している。

「少しは推進している」が最多

 日本企業のDXの推進状況は、前回の2020年調査に比べてどのように変化したのだろうか。現状を把握するため、前回調査と同様、「貴社はDXを推進していますか」と尋ねた。「積極的に推進している」と「少しは推進している」「あまり推進していない」「全く推進していない」の4つの選択肢から選んでもらった。

図 「DXを推進していますか」に対する回答結果
図 「DXを推進していますか」に対する回答結果
「積極的に推進」が大幅増(出所:日経クロステック/日経BP 総合研究所 イノベーションICTラボ『DXサーベイ 2023-2025 674社の成功・失敗の実態と課題分析』)
[画像のクリックで拡大表示]

 最も回答割合が大きかったのは、DXを「少しは推進している」で38.3%だった。これに「積極的に推進している」が31.8%で続く。これらを合計した「推進している」は7割を占めた。一方、「あまり推進していない」が13.2%、「全く推進していない」が15.9%だった。「推進していない」の割合は3割である。

 DXの推進状況は、前回2020年調査の結果と比較すると、大きく変化した。前回は「推進している」と回答した比率が5割弱、「推進していない」が5割強だった。これが今回の調査では、「推進している」との回答が前回よりも22.5ポイント増加。「推進している」と回答した割合が、「推進していない」よりも大きくなった。

 「推進している」の内訳を見ると、今回の調査では「積極的に推進している」の割合が前回(12.8%)と比較して19ポイント上昇し、最も増加が大きかった。「少しは推進している」の比率は、前回(34.8%)に比べて3.5ポイント増えた。これに対して、「推進していない」はどうか。割合が最も減ったのは「全く推進していない」である。前回(31.9%)と比べて、今回(15.9%)は16ポイント減った。「あまり推進していない」の比率は今回が13.2%で、前回(20.1%)と比べて6.9ポイント低下した。

成果を上げている企業は約3割

 日本企業におけるDXの成功度合いを探るため、前回調査に続き、今回も取り組みの「本気度」と「成果」について尋ねた。ここでいう「本気」とは、「実際の事業に適用することをプロジェクトの目標としていること」を意味する。PoC(概念実証)の位置づけにとどまっているDXプロジェクトは、「本気の取り組みの範囲外」とした。

図 DXプロジェクト(DXを推進するためのプロジェクト)の本気度に対する回答結果
図 DXプロジェクト(DXを推進するためのプロジェクト)の本気度に対する回答結果
「本気で取り組む」も成果を得ているのは3割(出所:日経クロステック/日経BP 総合研究所 イノベーションICTラボ『DXサーベイ 2023-2025 674社の成功・失敗の実態と課題分析』)
[画像のクリックで拡大表示]

 DX推進企業のうち、「本気で取り組み、目覚ましい成果を上げている」のは2.8%にとどまる。最も割合が大きかったのは、「本気で取り組み、一定の成果を上げている」(28.9%)だった。これに、「本気で取り組んでいるが、まだ成果を上げていない」(27.9%)が続く。「PoCという位置づけである」が23.6%で3番目に多い。

 DXプロジェクトに「本気で取り組み、目覚ましい成果を上げている」(2.8%)と「本気で取り組み、一定の成果を上げている」(28.9%)を合計すると31.7%である。つまり、DXで成果を上げている国内企業は約3割にとどまることが判明した。

 このような状況では、日本企業のDXが成功しているとはいえない。多くの企業が戦略や推進体制、組織風土など様々な面を見直して強化を急ぐ必要がある。