既存勢力の店舗削減が相次ぐ中で、新興勢が台頭し始めている。IT企業による小売業への参入だ。米アマゾン・ドット・コムをはじめ、世界のIT大手がその触手を伸ばし始めた。

 2017年6月、アマゾンは米食品スーパーのホールフーズ・マーケットを137億ドル(約1兆5000億円)で買収すると発表した。約470店舗を一気に手に入れるというIT業界の巨人の動きは、業界内外を驚かせた。米ブルームバーグは「EC界の巨人による衝撃(bombshell:爆弾)買収」と大々的に報じた。

 発表後、世界最大の小売りチェーンである米ウォルマートの株価は下落。一方、アマゾンはホールフーズ買収後初の決算となった2017年7~9月期の売上高が前期比34%増え、その後一気に株価が上昇した。

 アマゾンは8月に買収を完了した後、次々とホールフーズに「アマゾン流」を持ち込んだ。互いの商品を互いの店舗やECで販売するといった単純な施策だけではない。買収完了後すぐに、ホールフーズの複数の商品を対象に値下げを発表。2018年2月にはアマゾンの有料会員用クレジットカードを使った購入については購入代金から5%を還元すると発表した。ホールフーズの店舗から2時間以内に生鮮食品を自宅に無料で届けるサービスも開始。現在はテキサス州の一部など4地域にとどまるが、2018年中に全米に配送地域を広げるとしている。ホールフーズの店頭には、アマゾンで購入した商品の受け取りや返品に使えるロッカーが設置され始めた。店舗とECの垣根を超えた取り組みが矢継ぎ早に進んでいる。

米アマゾン・ドット・コムの買収直後に米食品スーパー、ホールフーズ・マーケットは複数商品を値下げした
米アマゾン・ドット・コムの買収直後に米食品スーパー、ホールフーズ・マーケットは複数商品を値下げした
(写真提供:米ホールフーズ・マーケット)
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