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AWS上にシステムを構築する場合、「Amazon Aurora」はDBの有力な選択肢になる。Auroraの機能拡張は他のAWS上のDBサービスよりも優先されるメリットがある。一方、更新も頻繁でエンジニアのリソースを情報収集や学習に充てることも欠かせない。

 今回から本連載は具体的なクラウドデータベースサービスについて解説します。第4回は企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)を進める上で、データ基盤として米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)の「Amazon Aurora」を採用するメリットとデメリットを解説します。

 Amazon AuroraはPostgreSQL、MySQLと互換性を保ちつつ、AWSが独自機能を追加したDBサービスです。クラウドに適した改修を施すことで、性能、セキュリティー、可用性などを強化しています。

 なお、Amazon Auroraという名称はPostgreSQL、MySQLとの互換性を持つ2つのDBサービスの総称です。正式名称は「Amazon Aurora with PostgreSQL compatibility」「Amazon Aurora with MySQL compatibility」です。記事ではAurora PostgreSQL、Aurora MySQLと記載します。総称で表記する場合はAmazon Auroraもしくは単にAuroraと記載します。

 現在、既存のオンプレミス環境からクラウドへDBを移行したいというユーザー企業からの依頼が増えています。特にAWSへの移行においてDBの選択肢はAmazon Auroraを最優先に検討し、それが難しければ他の選択肢を検討するユーザーが多い印象です。

 以下ではクラウドならではの拡張性や可用性、リージョンレベルの耐障害性といった一般的な視点ではなく、DXを進める上でAmazon Auroraにどのような優位性があるかに焦点を当てて解説します。

Amazon Auroraを使うメリット

 以下で取り上げる機能は2021年5月時点で2019年以降に追加されたAuroraの最新機能です。ここで強調したいことは、Amazon Auroraの機能拡張は他のDBサービスよりも優先されているということです。AWSを使う上では、やはりAmazon Auroraを利用することで得られる恩恵は大きいと言えます。

(1)性能強化

 Aurora PostgreSQLは同条件で稼働するコミュニティー版PostgreSQLより最大3倍の性能が出るとされています。実際に、Aurora PostgreSQLとAmazon Relational Database Service(RDS) for PostgreSQLについてベンチマークテストで性能比較したところ、Aurora PostgreSQLはRDS for PostgreSQLよりもスループットが3倍以上、平均レスポンスタイムは4分の1程度短い結果が出ました。なお、このベンチマークテストは卸売業の注文処理をモデルとして、スペックなどの条件を同等にし、同時接続数を100として実施しました。

 Amazon Auroraには独自のパラレルクエリーなどの性能を強化する機能が追加されています。ストレージ層を中心にクラウド基盤上で高い性能を発揮できる改修が施されています。

 DXプロジェクトの場合、オープンソース系DBの性能が向上するメリットは大きいと言えます。プロジェクトを始める時点では大きな効果を上げられず、検証しないと分からないことがあります。こうした場合でも、商用データベースに高額なライセンス料金をかけることなく大規模なデータの処理ができるからです。

 開始当初のデータ量が少ない場合であっても、DXがうまく進み、高い性能が必要になった際にもスペックの調整だけで使い続けられるのもメリットです。