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IT人材、デジタル人材育成に向けた究極の策、教育が大きく動き出す。2022年4月から高校の「情報Ⅰ」が必履修化、全員がプログラミングやデータ活用を学ぶ。デジタル人材には知識やスキルとともに、新たなデジタル社会の行動規範が必要になる。

 「デジタル人材は正直奪い合いの状態で、思ったように採用できないのが実情だ」。就職サービスなどを手掛けるマイナビの谷本健次人事統括本部採用部部長はこう明かす。DX(デジタル変革)の加速、デジタル社会の到来に伴い、IT人材、デジタル人材が企業で果たす役割の重要性は増す一方だ。

 そんなデジタル人材を育成し、人材不足を解消する究極の策が動き出している。国家百年の大計、教育だ。企業や社会の要請に応えるように、実践的で未来を見据えたIT教育が様々な場所、組織で進んでおり、学校の現場も例外ではない。

毎年100万人がIT人材予備軍に

 国民的素養――。文部科学省の高等学校情報科担当調査官として新学習指導要領「情報科」の改訂に携わった京都精華大学メディア表現学部の鹿野利春教授は2022年4月から必履修科目となる「情報Ⅰ」をこう表現する。「情報Ⅰは授業で全員が学ぶことに意味がある。毎年約100万人がモノをつくれる素地を持つことになり、日本全体の生産性向上にも大きく寄与する」と期待する。デジタル人材の予備軍を爆発的に増やす可能性を秘めている科目、それが「情報Ⅰ」だというのだ。

 2022年度入学以降の高校生全員が学ぶ科目として「情報Ⅰ」の授業が今春から始まる。情報科目は2003年度から必履修化されたが、このときは「情報A」「情報B」「情報C」の3科目から学校ごとに1科目を選択必履修する形だった。「情報A」はコンピューターやネットワーク活用の基礎を、「情報B」はコンピューターの仕組みやそれを活用した問題解決を、「情報C」は情報の表現やコミュニケーション・情報社会について学ぶ科目であり、ほとんどの高校が情報Aを開設する状況だった。

 2013年度から情報科目は「社会と情報」「情報の科学」に再編。「情報A」相当がなくなり、「情報B」相当が「情報の科学」に、「情報C」相当が「社会と情報」に変わった。ただこのときも学校ごとの選択必履修である点は変わらず、情報の実社会における活用などを学ぶ「社会と情報」を選ぶ学校が8割を占めた。情報技術を学ぶ「情報の科学」の履修は2割にとどまった。

図 情報教育の動きとIT業界の動き
図 情報教育の動きとIT業界の動き
2022年度高校の「情報Ⅰ」が必履修に
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