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国内有数のIT先進企業が、デジタル戦略の推進へとかじを切った。データやAIを徹底活用、社員の力を引き出し事業と事務をともに変革する。目指すは数百年来変わっていない損害保険の進化だ。

 国内の損害保険最大手、東京海上グループがデジタル戦略の強化に突き進んでいる。全社横断の推進部門を設け、社内の業務から顧客向けサービスまで企業活動全般を変革する。このため同部門を中心に戦略の立案から事業の企画、プロジェクトの推進、IT部門や外部のパートナー企業との連携、人材の育成まで、一連の施策を推進している。

図 東京海上グループの経営戦略とDX戦略
図 東京海上グループの経営戦略とDX戦略
経営強化の土台を築く
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17世紀から変わらぬ事業モデル

 「デジタルテクノロジーやデータを徹底的に活用し、競争優位性につながるビジネスモデルへ変革する」。東京海上ホールディングス(HD)の小宮暁社長グループCEO(最高経営責任者)は、デジタル戦略強化の意気込みをこう語る。

 東京海上グループが目指すのは既存の損保の枠を越えた事業体制の確立だ。顧客が偶然の事故や避けられない自然災害に遭った後、被った損害を金銭で補償する。事後の補償という損保の基本的なビジネスモデルは「17世紀から同じままだ」(東京海上HDの前川純一デジタル戦略部デジタルR&Dグループアシスタントマネージャー)。

 従来の業務革新の取り組みは補償の対象を広げたり保険金を素早く正確に支払ったりできるようにするもの。事後に損害を補償するという事業の基本的な枠組みは変わっていない。

 東京海上グループは事後が主体だった事業の枠組みを、「事前」へと広げる。自然災害の程度や範囲を予測して顧客に対策を促し、被害を低く抑える。自動車の安全運転を促して、事故そのものを起こさないようにする。既存事業の品質や効率を高めつつ損害を抑制。顧客向けの付加価値を高め、自社の収益性も改善する。