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ビジネスチャットと組み合わせる技術の中でも相性が良いのがAIだ。機械学習などの進化で人間と変わらないほど自然なやり取りが可能になりつつある。真価を発揮させるには導入すべき業務を見極め、まず効果を実感したい。

 近年の人工知能(AI)ブームで、データ分析や作業の自動化に対する企業の期待はやや過剰とも言えるほどに高まっている。ビジネスチャットに関しても導入してしばらく経つとAIを組み合わせることで、さらに仕事の効率を高められるとの期待が出てくる。自動化の基盤技術としてAIに着目するのは自然な流れだ。

 今回はビジネスチャットとAIを組み合わせて、顧客サービスの品質や業務の生産性を高めるための活用例と導入の勘所を紹介する。AIを使ったビジネスチャットの有力な用途が消費者などの顧客向けに企業が情報を提供したり問い合わせを受け付けたりするサービスだ。

 企業のWebサイトやメールに代えて、LINEをはじめとするチャットツールを使ってやり取りする。消費者がいつも持ち歩くスマートフォン(スマホ)を使うことで、手軽に素早く情報をやり取りできる。本連載で紹介してきた企業内の情報共有や業務効率化に加えて、消費者向けのチャットサービスも企業が使うという意味でビジネスチャットの応用例と言える。

 消費者向けサービスの場合、利用者が使うのはLINEなど個人向けのチャットアプリだ。ただユーザー企業内の顧客情報管理システムやデータベースなどとLINEを接続する必要がある。多くの場合、チャットツールの提供元が企業向けの接続サービスを用意している。LINEの場合は運営元のLINEが提供する「LINE ビジネスコネクト」を使うことで、ユーザー企業内のシステムとLINEを接続できる。

消費者向けに浸透

 AIとビジネスチャットを組み合わせたサービスは既に私たちの日常生活に溶け込みつつある。最も多い実例がチャットボット(自動応答プログラム)だ。あらかじめ定めた手順に沿って限られた応答を自動的に返すだけでなく、AIを組み合わせることでより複雑な処理を実施したり利用者とのやり取りを通じてサービス品質を高めたりできる。

 例えば日本郵便の配送情報サービスの場合、利用者はメッセージングサービスのLINE上で同社のキャラクター「ぽすくま」にメッセージを送って荷物の配送状況を尋ねたり配達日時を指定したりできる。転居届を出して荷物の転送手続きをすることや、切手の購入手続きも可能だ。24時間いつでも応答するうえ、宅配ドライバーなどに直接電話をかけるのに比べて心理的なハードルは低いと言えるだろう。

 企業内でもAIとビジネスチャットが活躍する余地は大きい。一例が社内のイントラネットに散在したデータや大量のFAQ(よくある質問と回答集)を検索して回答をチャットの形で利用者に送る、といった用途だ。グループチャットの発言内容から組織の雰囲気や従業員の仕事への意欲を分析する企業向けサービスもある。ITを使って人材活用を支援する「HRテック」にも生かせるわけだ。

図 AIを使ったビジネスチャットの活用例
図 AIを使ったビジネスチャットの活用例
スマホを利用者との接点に
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クラウドで手軽に体験

 ここにきてビジネスチャットとAIを組み合わせたシステムを開発するためのツールが充実してきた。前回紹介した「iPaaS(インテグレーション・プラットフォーム・アズ・ア・サービス)」と同様、画像認識や機械学習といったAI機能を提供するシステム(AIエンジン)をAPI(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)経由で使えるクラウドサービスが多い。

 ユーザー企業は目的に応じたAI機能をビジネスチャットに手軽に追加できる。開発作業もiPaaSと同様、プログラミングではなくWebブラウザー上で簡単な設定を施すだけで済む。

 米マイクロソフトが提供する「QnA Maker」は、質問に自動で答えるチャットシステムを作るためのクラウドサービスだ。企業は質問と回答のペアを表形式にまとめたデータファイルを作ってクラウドにアップロードするだけ。後はQnA Makerが自動的に内容を学習するため、チャットを使った消費者向けのFAQサービスなどを簡単に作れる。

表 AIを組み合わせたチャットボットと一般のチャットボットの違い
表 AIを組み合わせたチャットボットと一般のチャットボットの違い
対話を通じて成長する
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議事録を自動作成

 企業内の業務をAIとビジネスチャットで効率化するためのクラウドサービスも増えている。例えば筆者は「minmeeting(ミン・ミーティング)」というサービスを個人で開発し、無償公開している。minmeetingは会議を効率化するための情報共有や行動の見える化を支援するサービスだ。

 ビジネスチャットと組み合わせたシステム開発に向くAI機能の1つが、音声認識で簡易議事録を自動作成する機能だ。まず会議の音声を文章データに変換。文章データと参加者が入力したアジェンダを組み合わせ、議事録の形式にまとめていく。

 発言内容の感情を分析して、会議でどれくらいネガティブな発言がされているのかを明示することで、ネガティブ発言の連鎖を予防する機能もある。感情データや会議時間あたりの発言数など会議の活発度を推定できる統計データも議事録に添付する。自動作成した議事録データは会議が終わると同時にビジネスチャットを通じて、参加者全員に送れる。

 AIとビジネスチャットを組み合わせたシステム開発作業そのものは容易だが、応答の精度を高めるには試行錯誤が必要だ。まず十分な量と品質の学習用データを用意しなければならない。回答の精度を高めていくためには、AIが質問と回答結果を学習してより適切な回答を自ら選べるようになるようにする仕組みも必要だ。

 回答結果と同時に回答が役に立ったかどうかの選択肢も表示し、利用者からのフィードバックを得る仕組みが一例だ。多くの質問が集まるほどフィードバックを得られる機会も増えて精度向上につなげやすい。言い換えると利用者や質問件数が少ない場合はAIを使うメリットが小さいと言える。

図 議事録の自動作成サービスの例
図 議事録の自動作成サービスの例
ビジネスチャットが書記代わり
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