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組織を変革するリーダーに欠かせないのが「心のマネジメント」だ。仕事の楽しさを教える変革にはまずリーダー自身の変革が欠かせない。現場に出向き、明るく挨拶し、全身で変化を見つけ、チームで褒め合おう。

 組織改革には部下のやる気を高めて自発的に仕事をしたくなるように導くマネジメントである「心のマネジメント」が欠かせません。前回に続き、心のマネジメントを実践できるようするため、マネジャーやリーダーが自分の行動や振る舞いをどう改善すべきかを解説します。

 筆者は様々な企業・組織で支援活動を始める時に必ず「楽しんでいきましょう!」と元気よく呼びかけています。ただ相手は決まって、「何を言っているの?」と戸惑うもの。根拠は後述しますが、それでも筆者は笑顔で元気に話しかけ続けます。

 現場の最初の反応は仕事を楽しめていないか「仕事は必ずしも楽しむものではない」という思いがまん延しているかのどちらかだと思います。いずれにしろ多くの現場は仕事を楽しめない真因を探究しておらず、探究を自ら拒否しています。

 人にはムラがあります。プロスポーツ選手や芸術家、棋士など、その仕事に憧れ、好きで就いた人でも24時間365日仕事を楽しんでいるわけではないでしょう。

 むしろ「プレッシャーを感じ、逃げ出したい心境」と隣り合わせで苦しいときが多いかもしれません。ある本は、人が悩む根元は「人は将来を考えることができるからだ」と解説していましたが、まさにその通りだと思います。

 人によって将来の心配事は様々ですが、今が不遇だと感じていても明るい将来が見えていれば前向きで明るくなれるものです。読者の皆さんも子供の頃は将来に希望を持ってワクワクして楽しめていたと思います。

 今はワクワクしているでしょうか。不確実な世の中で暗い話が多い中、将来を考えて不安のほうが大きくなっているかもしれません。

コミュケーションツールの功罪

 ワクワクした気持ちを共有できる仲間が減っているのも仕事を楽しめない1つの原因です。インターネットやSNSの普及で人の付き合い方が簡便になった半面、深い付き合いや絆を育むきっかけが少なくなっています。メールやチャットなどのツールによって仕事の連絡は便利になりましたが、職場の絆は強まったでしょうか。

 米国の人類学者であり、非言語コミュニケーション研究のパイオニアでもあるレイ・L・バードウィステル氏によると、2者間の対話において「言葉によって伝えられるメッセージ(言語的コミュニケーション)」は全体の35%にすぎません。残りの65%は話しぶりや動作、ジェスチャー、相手との間のとり方など、言語以外の手段(非言語コミュニケーション)によって伝わるとのことです。

 面と向かって話せば何でもないことがメールやチャットで話すと、お互いに気まずい思いを残す言い争いに発展するような事態を、皆さんも一度は経験しているのではないでしょうか。この一因は「言葉によって伝えられるメッセージは全体の35%」にあります。加えて、それぞれが持つ「暗黙知」をお互いが理解していない点が災いしているのは言うまでもありません。

 筆者は、人は便利になればなるほど考えることを放棄して、考えることが苦手になっていくと思っています。良い人間関係は1日で築けるほど簡単なものではありません。

 絆を深めるには対面で過ごした経験や相応の時間が必要です。チャットやSNSでコミュニケーションが便利になればなるほど、言葉によって伝えられるメッセージが増え、人間関係は薄くなっていく―。より良い関係を築くのは実は面倒な作業なのです。

図 2者間のコミュニケーション
図 2者間のコミュニケーション
言葉で伝えられるのはわずか35%
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足かせとなる思い込み

 話を戻して、皆さんは仕事を楽しいと感じているでしょうか。「お金を得る行為だから、仕事はつらくて当然」「プライベートを充実させるために仕事をしているのでつらくても我慢できる」「自分には向かないが生活のために仕方なく働いている」「特にこれといった才能が無いので今の職場にいる」「仕事はそつなくこなせているが月曜日は気が重い」「就職難の時代に採用してくれたから苦しくても構わない」―。

 毎日のように様々な報道で仕事や職場でのストレスが話題になっています。それを見聞きし続けていれば、自然と「仕事や職場は苦しいものだ」と刷り込まれていきます。それにより些細な出来事でも「ストレスだ」「ハラスメントだ」と過敏に反応してしまうケースもあるかもしれません。誤解の無いようにしていただきたいのは、些細な違和感を無視しろと言っているのではありません。

 職場のメンバーが穏やかな気持ちで仕事をできているのか。現状を周囲の人に心置きなく話せているのか。お互いの弱みを共感してチームとして活動できているのか。孤独を感じてないか―。全員がこうした目線で問題意識を持ち、その問題を解消しようと仕事していれば、自ずと仕事や職場は楽しく明るくなってきます。

 仕事の内容そのものより、職場や人間関係によって仕事はつらくも楽しくもなるのです。特にホワイトカラーの職場は仕事のやり方が可視化されておらず、各人がそれぞれのやり方で仕事に臨んでいるというサイロ化された「個人商店」ばかりです。チームという一体感を味わえない悪い状態といえます。仕事がつらい元凶は全てここにあると筆者は考えています。

 こんな個人商店の集まりに対して、「仕事を楽しくしよう」「風通しの良いチームにしよう」と訴えても行動を変えてもらえません。個人商店のそれぞれは「今の働き方は変えられない」と思い込み、「つらくても今のままでよい。何も変わらないし、変えられない」というあきらめが心の足かせとなっています。

 仕事のやり方は誰かが勝手に変えてくれるものではなく、自分が変えていくものです。ただ、良きにつけ悪しきにつけ、今の仕事のやり方や職場の雰囲気は長年培われ習慣化しています。それを変えるには相当なエネルギーや苦労が伴います。心の足かせがあるなか、エネルギーが要る変革に対し、リーダーが旗印を掲げて声高に訴えても現場からは一向に変わる兆しが見えてこないものです。