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来場者や売り上げが減少している郊外型キャラクターテーマパーク。「コンテンツ価値の広がりがない」状態に陥っていないか。コンテンツ価値の棚卸しで、新規客層にアピールする視点を獲得する。

 「西部課長、七姫子市の郊外にあるキャラクターテーマパーク『センリバ・パピィパーク』の業績拡大企画があります。何かアイデアはありませんか? 私は子供の頃に数回しか行っていないので知りませんでしたが、来場者数も売り上げも減ってこのままでは閉鎖も検討されそうなんです」

 システム企画室の岸井雄介は喫茶室で缶コーヒーを飲んでいる経営企画課長の西部和彦に聞いた。

 「一世を風靡したキャラクターグッズの会社『センリバ』運営のテーマパークだよな。子犬のキャラクターが人気だったけど、今はあまり聞かないな。客を増やすっていうけど、都市部から電車で1時間以上かかる郊外ではてこ入れは難しいのではないか」

 「そうなんです。もともと小物雑貨の製造販売を手掛けていた創業者が商品にかわいいイラストをつけて販売したところ、小中学生に人気になり、ファンシーキャラクターグッズのビジネスを多角化したことが始まりです。日本でのテーマパークブームに乗って、30年前に七姫子市の郊外に主に女子小中学生向けとして開業しました。しかし近年、少子化で子供が減っていることが大きく影響し、現在は来場者数や売り上げが減少しています」

 「女児向けか……。それでは厳しいかもな。コンテンツに工夫がいるぞ」

 「湧田さんからも同じことを言われました」

 「新規ビジネス企画課の女性管理職の湧田由美部長補佐か?」

 「はい。湧田さんに説明したら、『コンテンツ価値の広がりがない』って言われたんです」

 「例の5項目シートで分析したか?」


 岸井雄介は35歳、西日本の地方銀行A銀行に入社以来システム開発に従事し、現在はシステム企画室の課長補佐だ。数年前にA銀行が買収したFintech子会社の企画部と兼務になったため、グループ横断的検討プロジェクトのメンバーでもある。

 西部和彦は37歳、A銀行でシステム企画を長く担当し、多くの仕事を成功させたエースで、岸井の大学の先輩でもある。出向していたITコンサルティング会社から復帰し、事業への貢献が認められ、経営企画課長に昇進した。