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 北近踊りは海外の観光客にも人気があるイベント型商材である。2密を避けるために人を制限して開催するのではビジネス面で弱い。

 そこで、年1回の機会に、自宅で踊った北近踊りを動画配信し、コンテストを行い、順位を付けたり、グランプリを選出して表彰したりするなどデジタルイベントのアイデアが有効である。これなら客が国内・海外のどこにいても参加できて楽しめる。

 また、北近踊りのオリジナル浴衣やうちわなどをネット販売できるようにすれば、そうした消費を通して、苦境にある地元事業者の支援という意義ある活動にもつながる。

 コト×トキ×イミを掛け合わせたイベント型商材は、デジタル化しても十分訴求力を持つので、リアルに負けない集客力、収益力を持つキラーコンテンツに成長する可能性があるのだ。


 「岸井、奥田担当課長が『デジタルの活用範囲が甘い』と言ったのはこういうことだ。奥田さんは、かつて海外の大型テーマパークでイベントビジネスの仕事を担当していた経験がある。だからイベント型商材のデジタル化に弱い君に不満だったんだ」

 「イベント型商材の収益性を向上させるには、コト×トキ×イミを掛け合わせたデジタル商材を考える必要があり、それには『コト×トキ×イミのデジタル商材分析シート』を使うのですね。早速、考えます」

 岸井は西部から説明を受けたことをベースに、企画書を作成の上、ビジネスアイデアを考え、1カ月後に奥田に説明した。

図 岸井氏が説明に使った資料
図 岸井氏が説明に使った資料
コロナ禍でも収益を得るデジタル商材を企画
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 奥田は「客が自宅で浴衣や笠を着て北近踊りを体験できること、動画で参加できること、関連グッズを買えることは人気になりそう。特に海外の客から喜ばれそう。これは移動も2密もない良いデジタル商材ね。新型コロナが収束しても継続して、収益源の1つに育つ可能性も大きい」と言った。

 岸井はアイデアの詳細検討、各デジタル商材の製作、広報戦略などの検討を行い、半年後に「デジタル北近踊り」のイベントを実施した。

 コロナ禍で中止になるイベントが相次ぐ中、デジタル北近踊りは国内、海外で大きな話題となり、多くの客がオンライン上に集まったという。

芦屋 広太(あしや・こうた)
教育評論家
SEを経て、現在は企業の情報システム部門でシステム企画・プロジェクト管理を担当。システム開発や問題プロジェクト・組織の改善、システム統合などの経験で培ったヒューマン・スキルを生かしたIT人材教育を行う。雑誌の連載、著書など多数。