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教育・研修はオンライン形式での実施が一般的になり、老舗の研修企業が苦しんでいる。さらにコロナ禍がもたらす非対面ニーズがオンライン化をいや応なく加速させた。受講者が使えば使うほど価値を見いだすオンライン教材の形を探す必要がある。

 「西部課長、日教研(日本教育研修所)の売り上げ拡大企画があるのですが、良いアイデアはありませんか?日教研は北近畿のB2B(企業向け)教育研修の企画制作販売会社で、事業会社や公的機関に新人/管理職研修、各種検定、eラーニングなど100種類を超える教材を制作、販売しています。最近は売り上げが大幅に減少しています」

 システム企画室の岸井雄介は、休憩室でコーヒーを飲んでいる経営企画課長の西部和彦に聞いた。

 「日教研か、老舗だな。多くの教室を持ち、講師は上場企業の元役員が中心、デジタル化には程遠いレガシー企業だな。このコロナ時代にデジタル化に遅れているのは厳しいだろうな」

 「そうなんです。創業者が、企業向け教育研修のベースプログラムを用意し、それを企業ニーズにあわせてカスタマイズする『セミオーダー型研修』を行う会社をつくろうとしたのが日教研の始まりです。このアイデアは当たり、急成長を遂げました。しかしコロナ禍で非対面研修ニーズが多くなり、リアル研修所を持たず、オンライン型の研修を安く提供するe-研修ドットコムなどの会社に押される一方です」

 「でもな、デジタル化するっていうけど何をするんだ?」

 「課長もそう思いますか。捧下(ささげ)部長代理も同じことを言います」

 「新規ビジネス企画課の捧下克志部長代理か?」

 「そうです。捧下さんに日教研のデジタル化戦略について説明したら、『デジタルビジネスのつくり方が弱い』って言われてしまいました」

図 教育研修サービス会社による新事業の可能性
図 教育研修サービス会社による新事業の可能性
デジタル後発で他社と類似サービスは厳しい
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 岸井雄介は35歳、西日本の地方銀行A銀行に入社以来システム開発に従事し、現在はシステム企画室の課長補佐である。最近A銀行が買収したFintech子会社の企画部と兼務になり、さらにグループ横断的検討プロジェクトのメンバーになった。

 西部和彦は37歳、A銀行でシステム企画を長く担当し、多くの仕事を成功させてきたエース人材で、岸井の大学の先輩でもある。出向していたITコンサルティング会社から復帰し、事業への貢献が認められ、経営企画課長に昇進した。