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日経コンピュータは2019年秋に創刊1000号を迎える。1000号に向け、創刊の1981年以降に起こったIT関連の出来事を1年ずつ振り返る。歴史から教訓を改めて学び、未来に生かすのが目的だ。第2回は1995年(平成7年)。米マイクロソフトが発売したOS「Windows 95」は世界中で売れ、インターネット時代の幕開けを告げる出来事となった。企業情報システムのオープン化にもつながった。

Windows 95が発売された1995年11月23日の風景。午前0時からの販売開始を求めて、秋葉原のPCショップや大手の家電量販店には長蛇の列ができた。(写真:Fujifotos/アフロ)
Windows 95が発売された1995年11月23日の風景。午前0時からの販売開始を求めて、秋葉原のPCショップや大手の家電量販店には長蛇の列ができた。(写真:Fujifotos/アフロ)
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 1月17日、兵庫県を中心とした近畿圏を最大震度7の阪神・淡路大震災が襲った。地震による傷がいえない3月には地下鉄サリン事件が発生。6月には全日空機がハイジャックされた。8月に発電を開始した高速増殖炉「もんじゅ」は12月にナトリウム漏洩事故を起こした。

 社会不安が日本を覆う1年だったが、ITの世界に目を向けるとインターネット時代の幕開けの象徴となる出来事があった。11月23日木曜日午前0時、米マイクロソフトのOS「Windows 95(以下、Win95)」日本語版の国内販売が始まったのだ。

 「深夜なのに店じゅうに人があふれていた。そんな光景は見たことがなかった」。同日深夜に秋葉原でWin95を買い求めた男性はこう振り返る。11月23日の日本経済新聞朝刊によれば、秋葉原の家電量販店「ラオックス・ザ・コンピューター館」の前に100メートル以上の列ができ、マイクロソフト日本法人(現日本マイクロソフト)やPCメーカーの社長が駆けつけ、0時を合図にくす玉を割ったという。「Win95」フィーバーは大阪や名古屋、福岡、札幌など日本中に広がった。

(写真:スタジオキャスパー)
(写真:スタジオキャスパー)
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UI改善、ネットを身近に

 Win95の出荷が米国で始まったのは8月24日。予定より1年遅れていた。「今後、Win95を抜きにして企業情報システムを語ることは難しくなる」と当時の日経コンピュータは書いている。全世界で7000万本、日本国内で約400万本を出荷した「Windows 3.1」の後継OSであるほか、多くのメーカーのPCにプレインストールされるというのが理由だ。

 Win95には今では当たり前になったPC機能が多数盛り込まれた。直感的なUI(ユーザーインタフェース)はその1つだ。当時の花王のシステム部長は「Windows 3.1より格段に良くなった」と評価していた。

 アプリケーションを起動する起点となる「スタートボタン」やファイルの種類別にアイコンを表示するファイル操作ソフト「エクスプローラ」を実装し、PC利用者が増える原動力の1つとなった。周辺機器を接続するだけで使えるようにする「プラグ・アンド・プレイ」機能やウィザード形式のヘルプ機能も備え、プリンターなどの外部機器も格段に接続しやすくなった。

 OSは32ビットのマルチタスクOSに進化した。企業向けの「Windows NT」や米IBMとマイクロソフトが共同開発した「OS/2」のように複数のアプリケーションが別々のメモリー空間で動作できるようになり、ExcelとWordを同時に動かすといった事務作業の効率化につながった。16ビットで「疑似マルチタスク」だったWindows 3.1でユーザーを悩ませたメモリー不足が減り、信頼性が高まると同時に、OSの処理速度は数十%高まったという。

 だが、なんといっても最大の強化点はネットワーク接続機能だろう。メールクライアントを標準装備し、LANにつながる複数のプロトコルもサポートした。当初はマイクロソフトのパソコン通信との接続を前提としていたが、後にWebブラウザーの「Internet Explorer」やプロトコルの「TCP/IP」などインターネット接続機能を充実。政府によれば企業におけるインターネット普及率は1995年の11.7%から96年には50.4%と大幅に増え、一般消費者にもインターネット接続を普及させる大きなきっかけとなった。

 翌1996年4月19日付の日本経済新聞朝刊は1995年度のWin95の国内出荷本数が380万本だったとするIDC Japanの調査結果を報じている。米マイクロソフトの業績は好調で、1996年6月期の売上高は前年同期比46%増の86億7100万ドル、純利益は同51%増の21億9500万ドルといずれも過去最高を更新した。Win95やNTなどOS分野が総売上高に占める割合は前年同期の40%から47%に高まった。

 MS-DOSに端を発するWin95の後継OSとして同98、同Meと続き、2001年にNT系のWindows XPが発表されて開発が終了した。OS/2などの競合製品を駆逐し、オフィスソフト「Office」と共に家庭と職場でマイクロソフトの名を世の中に知らしめ、文字通り世界にインターネットの「窓」を開いたWin95の功績は大きかった。

図 1995年の主な動き
図 1995年の主な動き
悲痛なニュースが続くなか、インターネット時代が幕開け
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