日本語の音声を聞き、理解し、話すAI技術が実用域に入りつつある。西武ホールディングスは会議の発言全てをAIでテキストに変換。スカパーJSAT子会社は電話の問い合わせ内容の分類に使い始めた。
人の声を聞き取って理解し返答する。このAI技術が進化し、適用できる業務の範囲が一気に広がった。
ソフトバンクが社員のプレゼンテーションの出来を評価するAIを開発したほか、西武ホールディングスは会議の議事録を自動作成するAIを導入した。飲食店を展開する「俺の」は、顧客からの電話による予約をAIで受け付ける。スカパーJSAT子会社はコールセンターに掛かってきた問い合わせの内容分析にAIを活用している。先進各社の取り組みを見ていこう。
ソフトバンク
AIがプレゼンの言葉を評価
プレゼンテーションの出来を自動で評価する「Well Presentation(仮)」。ソフトバンクが開発したこのシステムは専用のスマートフォンアプリとアプリケーション(AP)サーバーで構成される。サーバー側に(1)映像分析、(2)テキスト分析、(3)音声波形分析という3つのAIを備える。
社員が専用のスマホアプリで自撮りしたプレゼン動画をAPサーバーにアップロードすると、映像と音声に分けて分析する。
このうち社員がプレゼンで話した言葉を扱うのは(2)テキスト分析のAIだ。音声をテキスト変換して品詞に分解したうえで、キーメッセージを繰り返したか、プレゼンの聞き手に問いかけをしたかなどを調べる。
さらに(1)映像分析のAIによってアイコンタクトができているか、身ぶり手ぶりが大きいかなどを、(3)音声波形分析のAIによって声量が大きいか、早口になっていないかなどをそれぞれ評価する。
これらの評価結果を基に「話し方基礎」「効果的演出」「目的網羅性」「内容ロジック」という評価指標ごとに100点満点で採点する。
ソフトバンクでWell Presentationの開発を主導する先端技術開発本部MONET戦略課の塩原翔太氏は「講師と同様の視点でAIが自動採点する仕組みがあれば、学んだ内容が身に付いているかどうかを職場や自宅で練習して確認できる。研修の効果をより高められるはずだ」と期待する。
「将来的にはソフトバンクショップのスタッフ教育や面接の採点などにも応用したい」と塩原氏は話す。