PR
4/1朝まで
どなたでも有料記事が読み放題「無料開放デー」開催中!

なぜなぜ分析でスケジュールの「遅れ」を扱うことは多い。その際は、冒頭の事象で「遅れた時間」の長さを具体的に記述する。曖昧な表現では「なぜ?」が抽象的になるので、数字を書き込む癖を付ける。

 なぜなぜ分析の対象は、人為的なミス(ヒューマンエラー)だけではない。遅延(~の遅れ)について「なぜ?」を考えることはよくある。

 私はこれまで多くの企業で、遅延の問題を取り上げたなぜなぜ分析を指導してきた。そこで見えてきたのは、遅延のなぜなぜ分析では「なぜ?」の繰り返しや、そこから見いだした再発防止策が的を得ていないと感じるものが非常に多いということだ。

 例えば、事象を「Xプロジェクトが遅れた」として、「なぜ?」を繰り返してみる。「なぜ?」の中身を見てみると、よくあるパターンは、Xプロジェクトが遅れたのは「仕様の作成に時間がかかった」からとなる。

 では、仕様の作成に時間がかかったのはなぜかといえば、「仕様が決まらなかった」から。仕様が決まらなかったのは「関係者からの情報が集まらなかった」からと続くのが定番だ。

 既にお気づきかと思うが、「なぜ?」がどれも担当者の愚痴や言い訳と受け取られかねない内容になってしまっている。「関係者からの情報が集まらなかった」からのところで「なぜ?」を打ち止めにすると、当然ながら再発防止策は「関係者からの情報を早めに集めるようにする」となるだろう。

 前向きな対策に思えなくもないが、私に言わせれば、どう考えても掛け声だけに終わりそうなダメな施策だ。これで本当に次回から、遅れがなくなるのかと疑いたくなる。

 なぜこのように、効果的とは思えない再発防止策しか出てこないのか。理由は単純で、冒頭の事象の記述が「Xプロジェクトが遅れた」と非常に曖昧な表現になっているからだ。

図 なぜなぜ分析の例(修正前)
図 なぜなぜ分析の例(修正前)
プロジェクトが遅れた原因を探る
[画像のクリックで拡大表示]

事象は数字を入れて書く

 どれくらい遅れたのかによって、対策は変わってくるはず。だが「~が遅れた」とアバウトな表現で事象を記述したことで、それに続く「なぜ?」の繰り返しも曖昧で抽象的な表現になっている。

 スタート地点の事象がアバウトだと、アバウトな「なぜ?」ばかり繰り返されてしまう。これが最終的に、ほとんど無意味な再発防止策に行き着く元凶である。

 Xプロジェクトが遅れたという事象の表現では、「どのくらいの時間の遅れを問題視しているのか」がはっきりしない。そこで「Xプロジェクトが遅れた」と書くのではなく、「Xプロジェクトが当初の期限よりも3カ月遅れた(当初の期限は3月31日だったが、終了したのは6月30日だった)」と、数字を含めて具体的に記述するように努める。これが鉄則だ。

 同時に、スケジュールについて当初の計画と実績の差が一目で分かるような図を描くことをお勧めする。大事なのは、この図から仕事の内容(工程)ごとに超過した時間が読み取れるようにすることだ。どの仕事に遅れの大きな原因があったのか。図を見れば、誰でも分かるようにすれば、再発防止策の立案で迷ったり、もめたりすることはないだろう。

 例えば仕様書の作成で「4週間の遅れ」、仕様書の承認で「2週間の遅れ」、設計書の作成で「4週間の遅れ」、最後のプログラムの作成で「2週間の遅れ」。これらの遅れを合計した結果、全体で3カ月の遅れになったことが一発で理解できる。事象として記述した「Xプロジェクトが当初の期限よりも3カ月遅れた」とも合致する。

 スケジュールの超過時間を図に描き、さらに各仕事の工程ごとの遅れにまで分解しながら、「どの仕事にどれだけ時間がかかったのか(どれだけ遅れたのか)」を明確にする。そのうえで「なぜ?」を出していく。そして最終的には、遅れをゼロにするための再発防止策を考える。

図 Xプロジェクトにかける時間の計画と実績の比較例
図 Xプロジェクトにかける時間の計画と実績の比較例
分析前に計画と実績の差を数字で表現する
[画像のクリックで拡大表示]

時間かかるのは当然では進歩なし

 ここで肝心なのは「なぜ?」を考えるときに「どの仕事にどれくらいの時間がかかったのか」だけではなく、「どの仕事の時間をどのくらいまで短縮しなければならないか」といった観点まで考えることだ。するといつもと同じくらいの時間で済んだ仕事でも、もっと短い時間でこなせないのかといったところまで、考えが及ぶようになる。

 分かりやすい例でいえば、システムがダウンしたときの復旧作業の時間短縮がある。システムの修復には、停止してから復旧するまでにかなりの時間を要してしまうことが多い。だからといって「時間が長くかかっても仕方がない」と考えているうちは何も進歩しない。今までの延長線上で物事を見ていたら、業務改善などできないのだ。

 遅れの話でいえば、いつもより時間がかかった作業だけを問題視するのではなく、作業にかかる時間をもっと短くできる部分はないかといった広い視点で復旧作業全体を見直し、再発防止策に落とし込むのが理想的である。

 ところで、なぜ3の「関係者への仕様の聞き取り項目を作成するのに1週間かかった(3日の遅れ)」に注目してほしい。ここで「なぜ?」を打ち止めにして再発防止策を導き出している。さらに「なぜ?」を考えて、より良い再発防止策が出てくる感触があるなら、もっと「なぜ?」を続けてもよいだろう。

 だが「なぜ?」を繰り返せば繰り返すほど、関係者のあら探しのような「なぜ?」が出てくるようであれば、その手前で「なぜ?」はやめるべきだ。それよりも作業の当事者も交えた関係者全員で、時間短縮のための施策を考えたほうがずっと良い。

 なぜなぜ分析はスケジュールが遅れたことに対する始末書を作るためにするものではない。業務改善の一環としてなぜなぜ分析をしているわけで、無用な問い詰めは当事者を心理的に追い込むだけで、本人に協力を得られなくなり、何の得もない。

 だから、工程ごとに遅れた時間の分解までできたら、あとはその時間を短縮するための方策を検討することに貴重な勤務時間を使うべきである。

図 なぜなぜ分析の例(修正後)
図 なぜなぜ分析の例(修正後)
計画と実績の差を加味して「なぜ?」を出す
[画像のクリックで拡大表示]
小倉 仁志(おぐら・ひとし)氏
マネジメント・ダイナミクス 社長
1985年東京工業大学工学部卒業。デュポン・ジャパン(現デュポン)入社。1992年から日本プラントメンテナンス協会でトータル・プロダクティブ・メンテナンス(TPM)の指導に従事し、2005年に独立。2009年から続く「なぜなぜ分析 演習付きセミナー(実践編)」は毎回満席になるほどの人気ぶり。